ソロモンの偽証 第II部 決意
宮部 みゆき
2012年9月30日
新潮社
1,980円(税込)
小説・エッセイ
騒動の渦中にいるくせに僕たちは何も知ろうといなかった。けど、彼女は起ちあがった。校舎を覆う悪意を拭い去ろう。裁判でしか真実は見えてこない!彼女の覚悟は僕たちを揺さぶり、学校側の壁が崩れ始めた…気がつけば、走り出していた。不安と圧力の中、教師を敵に回してー他校から名乗りを上げた弁護人。その手捌きに僕たちは戦慄した。彼は史上最強の中学生か、それともダビデの使徒かー。開廷の迫る中で浮上した第三の影、そしてまたしても犠牲者が…僕たちはこの裁判を守れるのか!?
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(無題)
第一部で事件のあらましは明らかにされましたが、その真相は依然として作者の胸の中にあるのみで、読者は一種のフラストレーションに苛まれています。それは作中人物も同様で、本作品の主人公であることが明確になってきた藤野涼子が真相解明に一歩踏み出します。中3の夏休みを使って真相解明に当たり、それを卒業制作に当てようというのです。そんな涼子の提案に同級生は、どうも積極的ではありません。頭を抱える彼らに思っても見ないところから、援軍が現れます。不良少女・勝木の登場です。彼女は涼子たちの調査にどのような正統性があるのかを問います。一連の事件の1番の被害者は犯人扱いされている大出俊次であり、大出の依頼を受けて真相解明に当たりのが正しいやり方だと言うのです。これを受けて涼子は、大出に会いにゆきます。そこで閃きます。大出の無実の罪を証明するために校内裁判を行ない、真実を明らかにしようと決意するのでした。 準備期間は二週間、開廷8/15、審理は五日間、判決言い渡し8/20、被告人・大出俊次、罪状・殺人、検事・藤野涼子、弁護人・神原和彦です。 神原和彦とは、何者か。柏木卓也と一緒の小学校で中学生になってからは塾が一緒。「僕は、大出君は柏木君を殺していないと思う」「だからこれは冤罪だと思う」として弁護人に名乗りを上げたのでした。早速、弁護人は大出俊次のアリバイを立証するべく、また検事は「告発状」の差出人を特定し証言を引き出すべく、夫々が動き始めたのでした。 検事と弁護人が動くに連れて新たな事実が明らかになって行きます。また、登場人物のキャラクターも真実に近づくにつれ、贅肉が落ちて本来の姿が明らかになって行きます。とりわけ、頭脳明晰にして沈着冷静なスーバー中学生・神原和彦への疑惑がそこかしこに散見されます。 開廷の前日、事態が劇的な展開をみせます。大出俊次を殺人犯と告発した三宅樹理が、声を取り戻して法廷に出て証言すると言うのです。
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