新リア王(上)
高村薫
2005年10月31日
新潮社
2,090円(税込)
小説・エッセイ
55年体制を生きた政治家の王は80年代半ば、老いて王国を出た。代議士の父と禅僧の息子の、魂の対決。
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(無題)
青森政界のドン福澤榮とその庶子彰之(僧侶)との対話編。父は80年代の日本の保守政治を語る。実在した政治家が次々と登場する。高村の描写は、微にいり細に入りし、その場にありその場で呼吸してその場の臭いをかいでいるようだ。当時の政治の裏幕や政治家の謀略・心理戦に手に汗を握る。一方、息子彰之は曹洞宗の僧侶として仏法を語る。高村は阪神淡路大震災の罹災者である。地の底が抜けるような思いをした時「この次は仏教を書かなくてはならない」と感じたそうだ。しかし、よりによって禅門を選ぶとは。そもそもが不立文字教外別伝の禅の精神性を文字で表現する困難さにあえて挑戦せざるを得ない。だから所作や化儀の描写に終始せざるを得ないし、座禅によって、唯識論の阿頼耶識、末那識を覚知することを目的としてしまう。一晩枕を並べて寝た父・息子は翌日また対話を再開したのだった。話題はやがてむつ小川原開発に向かう。石油備蓄基地の建設はすでに終わり、後は核燃料サイクル施設の建設である。
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