制服捜査
佐々木譲
2006年3月25日
新潮社
1,760円(税込)
小説・エッセイ
警察官人生二十五年。不祥事をめぐる玉突き人事のあおりで、強行犯係の捜査員から一転、単身赴任の駐在勤務となった巡査部長の川久保。「犯罪発生率、管内最低」の健全な町で、川久保が目撃した荒廃の兆し、些細な出来事。嗅ぎつけた“過去の腐臭”とは…。捜査の第一線に加われない駐在警官の刑事魂が、よそ者を嫌う町の犯罪を暴いていく、本物の警察小説。
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もこりゅう
パッとタイトルをみると、なんだかエロティックなやつかなぁ、、なんて思うかもしれないけど、内容は男くさいハードボイルドな警察小説、、ならぬ駐在小説である
パッとタイトルをみると、なんだかエロティックなやつかなぁ、、なんて思うかもしれないけど、内容は男くさいハードボイルドな警察小説、、ならぬ駐在小説である。主人公が警察官ではあるのだが、所轄でもキャリアでもない。田舎町の駐在さんなのである。だからといって、のんきに呉作さんちの柿泥棒を追いかけるような小説ではない。田舎町ならではの犯罪があり、しきたりがあり、ルールがある。そこで大事なのは、「被害者をだなさい」ことではなく、「犯罪者をださない」ことなのだが、その隠れ蓑に隠れた犯罪が暴かれてゆく。 地元との癒着が問題になったことで、短いスパンで配置換えすることとなった北海道県警。強行犯係で25年過ごした川久保が主人公であり、単身赴任で駐在勤務となる、という設定が絶妙。彼の洞察の鋭さと、田舎町の閉塞感があいまって、重く、それでいておもしろい作品に仕上がっており、横山秀夫のようなにおいを感じた。5編の短編からなっており、それぞれの終わり方もこれまた絶妙。解決していない事件などがあるにもかかわらず、すっきりとしてしまう感覚さえある。各章に登場する人物造形もさることながら、ワトソン的な片桐の存在もあり、舞台設定による金田一耕介シリーズのような異常性もあり。ミステリとしてもみごたえのある秀作だ。
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