
ゴールデンスランバー
A memory
伊坂幸太郎
2007年11月30日
新潮社
1,760円(税込)
小説・エッセイ
仙台で金田首相の凱旋パレードが行われている、ちょうどその時、青柳雅春は、旧友の森田森吾に、何年かぶりで呼び出されていた。昔話をしたいわけでもないようで、森田の様子はどこかおかしい。訝る青柳に、森田は「おまえは、陥れられている。今も、その最中だ」「金田はパレード中に暗殺される」「逃げろ!オズワルドにされるぞ」と、鬼気迫る調子で訴えた。と、遠くで爆音がし、折しも現れた警官は、青柳に向かって拳銃を構えたー。精緻極まる伏線、忘れがたい会話、構築度の高い物語世界ー、伊坂幸太郎のエッセンスを濃密にちりばめた、現時点での集大成。
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もこりゅう
お得意の現実的でありながらどことなく寓話的な作風で、映画を観ているような心地よさ。
先日発表された2008年本屋大賞に、ノミネート作品された伊坂幸太郎の最新作。今回こそ、大賞がとれるか注目ではあるけれど、これまでの大賞作品の傾向からすると、ちょっとちがうような、それでいてドンピシャのような。お得意の現実的でありながらどことなく寓話的な作風で、映画を観ているような心地よさ。今回は、JFKとビートルズをベースにおいて物語が進んでいく。そこがまた60年代好きとしてはとてもいい。 仙台で新首相の凱旋パレードの中、教科書倉庫ビル方面から不振なラジコンヘリが近づき爆発。新首相は死亡。警察、そしてマスコミはこの暗殺事件をおいはじめる。すぐに容疑者が発表されるが、その彼は、かつてアイドルを悪漢から助け、時の人として報道されていた宅配ドライバーだった。その事件の少し前、大学時代の友人である森田と久々に会った青柳。そして森田は、「お前はオズワルドにされる」と口走るのであった。 伊坂幸太郎らしいウィットに富む会話に魅力的な登場人物。出てくるキャラクターにそれぞれ個性があり、しかもかっこよい。ロックにこだわる先輩ドライバー、痴漢を許さない父、プロの花火師などなど。。ただし例外として警察とマスコミには顔がないという皮肉。学生時代のエピソードが面白くどことなく懐かしい。その何気ないエピソードに張り巡らされた伏線が次々と現在で解きほぐされていく感覚が気持ちよい。最初の伏線が最後のエピソードへとつながるとき、思わずニヤリである。そして20年後、森の声を聴いている彼は、彼なのかなぁ。。
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