不明解日本語辞典
高橋秀実
2015年11月27日
新潮社
1,540円(税込)
語学・学習参考書
「普通」って何?「ちょっと」って何?読めば読むほど、日本語がわからなくなる。
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(無題)
言わずと知れた「新明解国語辞典」のパロディである。新明解といえば、およそ他の国語辞典には見られない解釈が独特で、その分かりやすさが親しみを持って一部の辞書ファンの支持を得ている。それを踏まえた上での「不明解」である。日本語は実に難しい。例えば今ここで「ちょっと」を考えてみよう。「ちょっと」の意味を普通に考えれば、少しばかり、わずか、と思い浮かぶ。しかし、その用法として「ちょっと話があるんだけど」と言う時は、絶対に「ちょっと」じゃない。「少し話があるんだけど」という時は短時間であるが、「ちょっと」だとかなり深刻な話になる。だから、「ちょっと」というのは「かなりのこと」。言葉の意味をこう考えていくと、どんどんどん深みにはまってしまう。色々と考えている内に「不明解」になってしまう。本書は著者の日本語への思索の記録である。 ところで、日本人が日ごろ、違和感を感じつつも使っている日常語に「すみません」がある。レストランでウエイトレスを呼ぶのに「すみません」。謝る必要がないのだからと、私の友人は「もしもーし」とウエイトレスを呼ぶ。電話じゃないのだからそれもどうかと思い、わたしは「お願いします」と声をかけることにしている。ところが、本書によれば「すみません」は「あやまっていない」のだそうだ。「すみません」は「済みません」、つまりこんな事で済まないのを分かっている、という恐縮した感情ではなく、「澄みません」、つまり自分の気持ちが澄まない、あなたにこのようなことをしていただいては、私の心が安らかでありませんと言うのが、元々の意味なのだそうだ。「すみません」は感謝を表しているのであって、決して謝罪しているのではないのだ。では、謝罪の言葉はといえば「ごめんなさい」だ。うんよく分かる。
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