血の味
純文学書下ろし特別作品
沢木耕太郎
2000年10月25日
新潮社
1,760円(税込)
小説・エッセイ
著者は少年時代に一本のナイフを持っていた。それは小さなものだったが常にズボンの中に入れてあり、ポケットに突っ込んだ手で握りしめていることが多かった。握りしめていると不思議に気持ちが落ち着いたのだ。著者にとってそのナイフは、揺れ動く自分の精神の安定を保つための錘りのようなものだったのかもしれない。しかし、なぜ少年にそうした錘りが必要だったのか。その記憶を辿るところから、この小説は書きはじめられた。中学三年の冬、私は人を殺した。
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