「新型うつ病」のデタラメ
新潮新書
中嶋聡
2012年6月30日
新潮社
748円(税込)
美容・暮らし・健康・料理 / 新書
「上司に叱られ、やる気ゼロ」「彼女に浮気されたので休職したい」…。この十年、そんな理由で精神科を訪れる人が急増。従来のうつ病とは明らかに異なる病態をもつそれは、「新型うつ病」と総称されるようになった。診断書を手に堂々と会社を休む人々、手厚すぎる社会保障、肥大化する自己愛と精神力の低下。はたして「新型うつ病」は本当に“病気”なのだろうか。もはや社会問題。そのまやかしを、現役精神科医が暴く。
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(無題)
「新型うつ病」とは、ずばり、逃避的な傾向によって特徴づけられる、抑うつ体験反応のことです。 最近では抑うつ体験反応と呼ぶのも気が引けるような人が、外来に現れるようになっているそうです。著者は「新型うつ病」が増えている原因を①精神医学における精神病理学の衰退。DCMの普及による診断力の低下、②SSRI(新しいタイプの副作用少ない坑うつ剤)の普及により投薬がしやすくなった、③現代人の精神力の低下、に求めています。 「従来型うつ病」の人は「自責的」で自分を責める傾向があるのに対して「新型うつ病」の人は「他罰的」で、他人を責める傾向にあります。また、仕事に対する態度にも違いがあります。「従来型うつ病」の人は仕事をなかなか休みたがらず、休職を勧めてもなかなかウンと言わないことが多いのに対して「新型うつ病」の人は、自ら休職を求めてきます。そして休職中に気分転換と称して海外旅行に出かけたりします。これって、本当に病気?という素朴な疑問が生じます。確かにうつ状態があったかもしれません。しかし、それをもってしてうつ病と診断していいのでしょうか、もしかして人格障害かもしれません。精神科の医師は、語感がきついから「人格障害」の診断はなかなか出しません。 どうも疾病利得をめぐってのモラルハザードが根底にあるような気がします。
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