いつまでも若いと思うなよ
新潮新書
橋本 治
2015年10月19日
新潮社
836円(税込)
小説・エッセイ / 新書
若さにしがみつき、老いはいつも他人事。どうして日本人は年を取るのが下手になったのだろうかー。バブル時の借金にあえぎ、過労で倒れて入院、数万人に一人の難病患者となった作家が、自らの「貧・病・老」を赤裸々に綴りながら、「老い」に馴れるためのヒントを伝授する。「楽な人生を送れば長生きする」「新しいことは知らなくて当然」「貧乏でも孤独でもいい」など、読めば肩の力が抜ける、老若男女のための年寄り入門。
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(無題)
私が住まう地域の隣町・大和市は、70歳代を高齢者と言わない宣言をした。最近では「人生100年時代」などと言われるようになってきた。そんな社会では、健康で自立した生活を送れる年寄り、あるいは地域社会で一定の役割を果たす年寄り像が求められているのだろう。その結果がこの宣言だ。それでは、当の年寄りはどう考えているのだろうか。確かに、誰の世話にもならず、生きがいを持って活力ある日々を送りたい、そしてある日コロリと死を迎えたい、これは高齢者誰しもが望む所である。しかし、それを自治体のリードの元で実現したいと思うだろうか。少なくとも私だったら「人の事は放っておいてくれ」と言いたくなる。だってこれまでに会社のため、社会のためと散々我慢してきたのだから、所属組織のなくなった今だからこそ年寄りらしく気ままで自由に過ごしたいと思う。万一サポートが必要になった時に、静かに援助するのが自治体の役割だと思う。 一口に高齢者と言っても老いの状況には甚だしい個人差がある。だから行政機関が一律に高齢者像を押し付けることに違和感を感じるのだ。老いは病を伴うのが普通だ。身体能力が衰える事を老いというのだから、地域のクリニックが年寄りばかりになるのは当然だ。かくいう私だって、心臓病を抱えて毎日4種類の薬のお世話になっている。私の友人で認知症を発症して、今では奥さんのサポートが無ければ何もできない状況に陥っている人もいる。また、本書の著者のように借金と難病を抱えて日々悪戦苦闘している人もいるのだ。人は様々なんだから、その多様さを認めて放っておいて欲しいと思う。 本書は誰にもいずれは訪れる「老い」を考えるキッカケになる書である。
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