発達障害と少年犯罪
新潮新書
田淵 俊彦 / NNNドキュメント取材班
2018年5月17日
新潮社
924円(税込)
人文・思想・社会 / 新書
発達障害と犯罪に直接の関係はない。しかし、発達障害をもつ子どもの特性が、彼らを犯罪の世界に引き込んでしまう傾向があることは否めない。そんな負の連鎖を断ち切るためには何が必要なのか。矯正施設、加害者になってしまった少年たち、彼らを支援する精神科医、特別支援教育の現場など、関係者を徹底取材。敢えてタブーに切り込み「見たくない事実」を正面から見据えて問題解決の方策を提示する。
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(無題)
仮に医療や教育の現場で対応していれば、子供を犯罪に走らせないで済んだかもしれない。ところがそんな手当を講ずる事なしに結果として少年院に送り込んでしまったとしたら、こんな悲しいことはない。そればかりか、子供の人権を侵害したこの対応は社会的非難を免れない。 普通の人々にとって理解不能な少年事件、例えば神戸連続児童殺傷事件(いわゆる酒鬼薔薇聖斗事件)の犯人少年Aや同級生を殺した佐世保市の女子高生、名古屋大学のタリウム女子大生は、逮捕後の精神鑑定で自閉症スペクトラム障害(アスペルガー症候)の可能性が指摘された。 いわゆる発達障害の人は、全般的な知的水準は健常であるが、対人関係を良好に保つ能力がすっぽりと抜け落ちていたりする。例えば、慣用的な表現、お世辞や皮肉が理解できないのである。正に文字通りの受け止め方しかできないのだ。また、次に起こることを想像することが難しく、自分なりに見通しを持つことができないので、同じパターンを繰り返す。だから、いつもと違う状況になるとパニックに陥る。 もちろん。発達障害と犯罪とは直接関係はない。ところが発達障害のある子供に虐待が加わると、どうも犯罪に走る傾向が高い事がわかって来た。そして、彼らの障害は、トレーニングで回復する事も具体的な訓練を積み重ねる中で見えてきた。本書は社会に大きな衝撃を与えた事件の裏に潜む発達障害を具体的事例を上げて理解を深めさせる一方、負の連鎖を断ち切る方途を探る書である。
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