
愛なき世界
単行本
三浦しをん
2018年9月10日
中央公論新社
1,760円(税込)
小説・エッセイ
恋のライバルが人間だとは限らない! 洋食屋の青年・藤丸が慕うのは“植物”の研究に一途な大学院生・本村さん。殺し屋のごとき風貌の教授やイモを愛する老教授、サボテンを栽培しまくる「緑の手」をもつ同級生など、個性の強い大学の仲間たちがひしめき合い、植物と人間たちが豊かに交差するーー 本村さんに恋をして、どんどん植物の世界に分け入る藤丸青年。小さな生きものたちの姿に、人間の心の不思議もあふれ出し……風変りな理系の人々とお料理男子が紡ぐ、美味しくて温かな青春小説。
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みんなのレビュー (6)
(無題)
それにしても作家の取材能力というか調査能力のレベルの高さには、感心してしまう。「舟を編む」では辞書編集者の世界が見事に描かれていたし、今回は植物学の研究者の世界である。バイオ技術で薔薇の新品種を作り出すとかであれば、経済性も伴うし何より華々しい話題性もありって注目されることだろう。しかし、本編で取り上げられているのは植物学でも基礎研究である。シロイヌナズナという植物の葉っぱの細胞を調べる研究なんて、実に地味な世界である。普通の人に興味をもてと言っても、相当な無理がある話だ。それを延々と書き込んで、空想の世界である小説に現実性を持たせるのだから、やはり大した才能である。 本書の大部分は植物学のお話に費やされるが、いわゆる『お仕事小説』ではない。ラブストーリーである。いや、ラブコメディと言った方が良いかもしれない。 藤丸陽太と本村紗英。主人公の2人である。先ずこの2人、カップルになるには、あまりに不釣り合いである。誰が見ても『お似合い』と映るのは、例えば藤丸が住み込んでいる洋食屋「円服亭」の大将・円谷とはなちゃんだ。「円服亭」二代目の円谷は料理一筋で生きてきた。だから、料理に対する姿勢と腕前は確かである。ところがその性格となると、頑固でいい加減だから妻子には逃げられる始末である。一方の花屋店主の“はなちゃん”は元ヤンキーの未亡人。肝玉母さん風の明るい性格である。どんな経緯があったか不明だが、70歳と60歳の熟年カップルは現在同棲中である。割れ鍋に綴じ蓋である。 これに対して藤丸はコック見習の住み込み店員、方や本村は東大理学部の院生、植物学者の卵である。育ちも住んでる世界もまるで違う二人である。当然、趣味や興味の方向も違うだろうし、話題も合うわけがない。そのギャップが滑稽さとなって、ほのぼのとしたラブコメディを形作っている。藤丸の恋の行方がどうなるか、楽しみである。
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カルーアミルク選帝侯💙💛
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