天、共に在り
アフガニスタン三十年の闘い
中村 哲
2013年10月31日
NHK出版
1,760円(税込)
科学・技術
なぜ、日本人の医師が1600本の井戸を掘り、25キロに及ぶ用水路を拓けたのか?内戦・空爆・旱魃に見舞われた異国の大地に起きた奇跡。
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我々に足りないのは気力と涙
アフガニスタンで活動した中村哲医師による13年の著者。1600本の井戸を掘り、25kmの用水路を拓いた1984〜2013年の30年に及ぶ闘いの記録。 アフガニスタンにはアジア世界の抱えるすべての矛盾と苦悩がある。大旱魃が猛威を振るい、自給自足の農業立国で国民の9割が農民・遊牧民であり、国全体が瀕死の状態にあるが、世界では知られていない。 大旱魃で死にかけた幼児を抱いた若い母親が、何日もかけて歩き診療所を訪れる。生きてたどり着いても、外来で列をなして待つ間に我が子が胸の中で死亡、途方に暮れる母親の姿は珍しくなかった。 餓死とは空腹で死ぬのではない。食べ物不足で栄誉失調になり、抵抗力が落ちた状態で汚水を口にして下痢症などの腸管感染症にかかり、簡単に落命する。 病気のほとんどが十分な食料と清潔な水さえあれば防げるもので、病気治療どころではなく、診療所自ら率先して清潔な飲料水の獲得に乗り出した。 08年ワーカーの伊藤和也氏が誘拐され、翌日遺体となって発見される。 用水路の建設にら10万人の農民の生存がかかっており、日本人ワーカー全員を帰国させ、断固として用水路事業を完遂することを目指した。 09年マルリワード用水路の全線24kmが開通。足掛け7年の工期により、死の谷と恐れられたガンベリ砂漠の農地を回復し、作業員400名は歓声と拍手の興奮の坩堝に包まれた。 様々な人や出来事との出会いに自分がどう応えるかによって行く末が定められていく。個人のどんな小さな出来事も、時と場所を超えて縦横無尽、有機的に結ばれている。 ワーカー伊藤和也氏についてはPMSのホームページにご両親の追悼メッセージもあり、涙なしには読めなかった。 中村哲医師の偉大な功績に合掌し、その遺志を何か継いで貢献したいと思った。
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