時間は存在しない
カルロ・ロヴェッリ / 冨永 星
2019年8月29日
NHK出版
2,200円(税込)
科学・技術
時間はいつでもどこでも同じように経過するわけではなく、過去から未来へと流れるわけでもないー。“ホーキングの再来”と評される天才物理学者が、本書の前半で「物理学的に時間は存在しない」という驚くべき考察を展開する。後半では、それにもかかわらず私たちはなぜ時間が存在するように感じるのかを、哲学や脳科学などの知見を援用して論じる。詩情あふれる筆致で時間の本質を明らかにする、独創的かつエレガントな科学エッセイ。
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ループ量子重力理論における『時間』に関する考察
これは…、“知的好奇心”くすぐられまくりでした。 『ループ量子重力理論』(⇔ちょっと前話題になった『超ひも理論』) の最前衛である著者が現代物理学を通して“時間”を定義していきます。 もちろん、生粋の文系脳である僕には数理的な理解はほとんど出来てません。 が、彼の“最先端の知識を羅列するだけでない”、なんとか分かりやすく伝えようと “古代の自然観や哲学的な議論にも踏み込んでいく”理論展開のチャレンジはとても刺激的でした。 第一部から、 全てのヒト/モノには一様に“時が流れる”という人類共通感覚的な理解は、アインシュタインの一般相対論により覆された。そこを出発点として…、 ・『時間と空間はまるでゴムのように伸び縮みし、巨大なエネルギーの周辺ではゆがみが生じる』 ・『時間と空間は一体化した広がりで、過去と未来を区別する方向性もない』 ・『“現在”という特別扱いされるべき時刻も存在しない』 ・『ニュートンの提唱する“絶対時間”はなく、時間や空間それ自体が物理現象を担う実体である=重力場』 と“時間の崩壊”が論証され、“時間や空間が根源的ではない”という新しい見方に基づいて、“世界の記述”が試みられていく。 第二部では、“根源的な時間のない世界”をいかに記述すべきか?が探求され、 ・『世界は常に“変化”しており、その意味で世界はモノでなく“出来事”で出来ている』 ・その“出来事のネットワーク”である『世界を我々の言語ではうまく表現できない』 ・あらゆる事柄が起きているのに“時間変数”は存在しない。その『関係としての力学』=“スピンネットワーク”での世界の記述=『ループ量子重力理論』 (この辺から頭から煙が立ってくるが、好奇心は尽きない…) そして第三部は、学界の定説でもなく、確証が得られてるものでもない…、 でも実に先鋭的で刺激的なロヴェッリの主張がいよいよ深まっていきます。 (もう完全に理解出来てないので、以下全くの引用です。) ・時間が“経過する”という感覚が未来によらず過去だけに関わる記憶の『時間的非対称性』に由来することを指摘。 ・その上で、記憶とは、中枢神経系におけるシナプス結合の形成と消滅という物理的なプロセスが生み出したもの。 ・過去の記憶だけが存在するのは、このプロセスがエントロピー増大の法則に従うことの直接的な帰結。 と論じます。 どうですか?興味が湧きましたか? これで“面白そう”と思えたら、きっと(理解できずとも)楽しめると思います。 湧かなかった人は手を出さない方がいいかと思います。 量子重力理論のような最先端の理論物理学は高度に数学的で、 ともすれば“ひたすら数式を弄り回す”だけで終わってしまう評論が多い印象ですが、 ロヴェッリの本書における『時間に関する議論』は、いつしか物理学の範疇を飛び出して、 脳科学や哲学の分野へも飛び込み、あらゆる“思索”を駆使して『謎を解明しよう』とする、熱い想いが感じられました。
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ループ量子重力理論における『時間』に関する考察
これは…、“知的好奇心”くすぐられまくりでした。 『ループ量子重力理論』(⇔ちょっと前話題になった『超ひも理論』) の最前衛である著者が現代物理学を通して“時間”を定義していきます。 もちろん、生粋の文系脳である僕には数理的な理解はほとんど出来てません。 が、彼の“最先端の知識を羅列するだけでない”、なんとか分かりやすく伝えようと “古代の自然観や哲学的な議論にも踏み込んでいく”理論展開のチャレンジはとても刺激的でした。 第一部から、 全てのヒト/モノには一様に“時が流れる”という人類共通感覚的な理解は、アインシュタインの一般相対論により覆された。そこを出発点として…、 ・『時間と空間はまるでゴムのように伸び縮みし、巨大なエネルギーの周辺ではゆがみが生じる』 ・『時間と空間は一体化した広がりで、過去と未来を区別する方向性もない』 ・『“現在”という特別扱いされるべき時刻も存在しない』 ・『ニュートンの提唱する“絶対時間”はなく、時間や空間それ自体が物理現象を担う実体である=重力場』 と“時間の崩壊”が論証され、“時間や空間が根源的ではない”という新しい見方に基づいて、“世界の記述”が試みられていく。 第二部では、“根源的な時間のない世界”をいかに記述すべきか?が探求され、 ・『世界は常に“変化”しており、その意味で世界はモノでなく“出来事”で出来ている』 ・その“出来事のネットワーク”である『世界を我々の言語ではうまく表現できない』 ・あらゆる事柄が起きているのに“時間変数”は存在しない。その『関係としての力学』=“スピンネットワーク”での世界の記述=『ループ量子重力理論』 (この辺から頭から煙が立ってくるが、好奇心は尽きない…) そして第三部は、学界の定説でもなく、確証が得られてるものでもない…、 でも実に先鋭的で刺激的なロヴェッリの主張がいよいよ深まっていきます。 (もう完全に理解出来てないので、以下全くの引用です。) ・時間が“経過する”という感覚が未来によらず過去だけに関わる記憶の『時間的非対称性』に由来することを指摘。 ・その上で、記憶とは、中枢神経系におけるシナプス結合の形成と消滅という物理的なプロセスが生み出したもの。 ・過去の記憶だけが存在するのは、このプロセスがエントロピー増大の法則に従うことの直接的な帰結。 と論じます。 どうですか?興味が湧きましたか? これで“面白そう”と思えたら、きっと(理解できずとも)楽しめると思います。 湧かなかった人は手を出さない方がいいかと思います。 量子重力理論のような最先端の理論物理学は高度に数学的で、 ともすれば“ひたすら数式を弄り回す”だけで終わってしまう評論が多い印象ですが、 ロヴェッリの本書における『時間に関する議論』は、いつしか物理学の範疇を飛び出して、 脳科学や哲学の分野へも飛び込み、あらゆる“思索”を駆使して『謎を解明しよう』とする、熱い想いが感じられました。
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難解だけどかなり美しさ溢れる本
著者はイタリア人理論物理学者。 2018年タイム誌のベスト10ノンフィクションに選ばれ、35カ国で刊行される世界的ベストセラーだそうです。 世の中の謎の一つ、時間。物理学者である著者が、数式だけではなく、あくまで自分が感じる"時の流れ"とは何かに迫って、自論を展開してくれます。 やはり、所々難解だけどかなり美しさ溢れる本です。
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