血の痕跡

Hayakawa pocket mystery books

スティ-ヴン・グリ-ンリ-フ / 黒原敏行

1994年6月20日

早川書房

1,388円(税込)

小説・エッセイ / 新書

私立探偵ジョン・タナーにとって、救急車の運転手をしているトム・クランドールは大切な友人だった。おなじバーに通い、たまに話を交わす程度の仲だったとはいえ、その彼が歓楽街で死体で発見されたというニュースはショックだった。しかも、自殺の可能性があるという。たしかにトムは悩みを抱えていた。企業買収でのしあがった大富豪が、金にものをいわせて彼の最愛の妻を奪おうとしていたのだ。だが、タナーにはどうしても、トムが自殺するような男だとは思えなかった。そもそも、なぜトムは歓楽街にいたのか。そして、彼が死ぬ直前にタナーの留守番電話に残した、「おれはいま血の痕跡をたどっている」というメッセージの意味とは。死にいたるまでのトムの足跡をたどりはじめたタナーの前に、頑ななまでの正義感ゆえに周囲の者の人生を狂わせていた友の姿が浮かびあがってきた。深い人間洞察に裏打ちされた正統派ハードボイルド。

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