憎しみの子ども

ヴェトナム戦争後のもうひとつの悲劇

キエン・グエン / 宇佐川晶子

2001年9月30日

早川書房

2,420円(税込)

小説・エッセイ / 人文・思想・社会

1975年4月30日、ヴェトナム戦争が終結した。その日まで、私は幸せだった。南ヴェトナムの海辺の町ニャチャンで、大邸宅を囲む高い塀に守られて、何不自由なく暮らしていたのだ。8歳の誕生日を前にした、その日までは。共産党政府に財産をすべて奪われ、収入の道も閉ざされて、私たち一家は生きるすべを断たれた。飢えに苛まれ、たった3本のいもに手を出しただけで、身内からさえも手ひどい制裁を受け、瀕死の重傷を負う。だが、私たちを骨の髄まで蝕んだのは、貧しさだけではなかった。「あいのこ」という残酷なあざけりー私と弟に流れる、アメリカ人の血のせいだ。悪意に満ちた差別と虐待が、容赦なく襲いかかる。ありとあらゆる憎しみのはけ口にされ、前途にひとすじの希望もない日々だった。ついに14歳のとき、祖国脱出を決意し、危険な賭けに出る。だがそれは、ほんとうの悲劇のはじまりでしかなかった…。すさまじい貧困と暴力を耐え抜き、生を渇望して祖国を後にするまでの、壮絶な体験を生々しく綴った衝撃のノンフィクション。

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