スパイはいまも謀略の地に
ジョン・ル・カレ / 加賀山 卓朗
2020年7月16日
早川書房
2,530円(税込)
小説・エッセイ
イギリス秘密情報部(SIS)のベテラン情報部員ナットは、ロシア関連の作戦遂行で成果をあげてきたが、引退の時期が迫っていた。折しもイギリス国内はEU離脱で混乱し、ロシア情報部の脅威も増していた。彼は対ロシア活動を行なう部署の再建を打診され、やむなく承諾する。そこは、スパイの吹きだまりのようなところだった。ナットは、新興財閥(オリガルヒ)の怪しい資金の流れを探る作戦を進めるかたわら、趣味のバドミントンで、一人の若者と親しくなっていく。ほどなく、あるロシア人亡命者から緊急の連絡が入った。その人物の情報によると、ロシアの大物スパイがイギリスで活動を始めるようだ。やがて情報部は大がかりな作戦を決行する。そして、ナットは重大な決断を下すことに……。ブレグジットに揺れるイギリスを舞台に、練達のスパイの信念と誇りを描く傑作。
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Tojo Hiroyuki
(無題)
初見にして自分にとって最も楽しめるタイミングであった。 文体の読みやすさに反し、人物の魅力は深い。 また国際的な諜報を舞台としながらそこに描かれるのは、家族や友人との関わりを問うもの。 結果的に遺作となったこの作品は夫婦愛はじめそのあたりの美意識が最も表れたものではないかと想像する。また、主人公と年齢が近く今こそ「分かる」時であった。 偶然勧められ、何とも運命を感じる読書となった。
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