消失の惑星【ほし】

ジュリア・フィリップス / 井上 里

2021年2月17日

早川書房

2,420円(税込)

小説・エッセイ

カムチャツカの街で幼い姉妹が行方不明になった。事件は半島中に影を落とす。2人の母親、目撃者、恋人に監視される大学生、自身も失踪した娘をもつ先住民の母親……女性たちの語りを通し、事件、そして日々の見えない暴力を描き出す、米国作家のデビュー長篇

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酒井七海

書店員

わたしたちは日々消失と葛藤しながらこの惑星に生きている

--
1
2021年03月01日

みんなのレビュー (1)

toruo

(無題)

-- 2022年05月12日

これは完全にカッコいい表紙とタイトルにやられた。アメリカの作家なんだけどロシア文学に惹かれカムチャッカの街…あんなところに街があるって個人的には凄く意外だった…に実際暮らしていたという冷戦期には考えられない経緯を経て産まれた作品なんだとか。物語の入口は凄くシンプルで海岸に遊びに来た幼い姉妹が何者かに拐われるところから始まる。この作品が普通でないところは誘拐に続く章がどれも事件には直接タッチしない形で進んでいくところでいずれも女性を主人公にした物語がいくつかポツポツと進んで行って、それらはなんとなく誘拐事件に触れたりはするのだけれども基本的には独立して読める短編であったりする。そして気がつくと序章に繋がる最終章に突入する、という形で実験的といえばそのとおりの極めて奇妙な物語になっている。作者の凄みは実験臭を感じさせずに純粋な物語として読ませてくるところであっさりしてるように見えてこれはかなり試行錯誤を重ねた結果なんだろうな、と思わせられた。気になってカムチャッカのことを少し調べてみたのだけれど山と深林に阻まれて陸続きに半島から出ることができず水路か空路を使うしかないらしい。不凍港があるため昔からソビエト海軍が基地を置いていたこともあってロシア人の入植者も多かったのだけどソビエト崩壊でかなりの人口流出があって、というかなり特殊な環境であるらしい。そんな特殊な環境も物語に反映されているのだろう。非常に面白く興味深い作品でした。

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