引金の履歴

乃南アサ

1998年4月30日

文藝春秋

1,466円(税込)

小説・エッセイ

袋から取り出し、包装紙を解きにかかった段階で、織江は何となく嫌な気分になり始めていた。奇妙に鼓動が速まっている。大体、その形が嫌だった。剣山にしては大きいし、その割には丸くも四角くもなく、何とも不安定な形状に見えるのだ。そして次の瞬間、織江は息を呑んだ。膝の上に広げられた紙の中から出てきたそれは、小さな、掌にのるほどの黒っぽい拳銃だった。少女から主婦へ、そしてサラリーマンへ。普通の人々の間を巡る一挺のコルトが殺意を刺激する!銃の魔性を描き尽くした異色の物語。

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