明日のことは知らず 髪結い伊三次捕物余話

宇江佐 真理

2012年8月31日

文藝春秋

1,683円(税込)

小説・エッセイ

人気の髪結い伊三次シリーズ最新作は、人情味あふれる短編6作を収録。 あやめを丹精することが生きがいの老婆が、庭で頭を打って亡くなってしまう。彼女の部屋から高価な持ち物が消えていることを不審に思った息子は、伊三次に調査を依頼する。暗い過去を持つ、花屋の直次郎が疑われるが……。(「あやめ供養」) 伊三次の弟子、九兵衛に縁談が持ち上がる。相手は九兵衛の父親が働く魚屋「魚佐」の娘だが、これがかなり癖のあるお嬢さんだった。(「赤い花」) 浮気性で有名な和菓子屋の若旦那は、何度も女房を替えているが、別れた女房が次々と行方知れずになるとの噂があった。このことを聞いた伊三次は同心の不破友之進に相談する。(「赤いまんまに魚そえて」) 伊三次の息子、伊与太が心惹かれ、絵に描いていた女性が物干し台から落ちて亡くなった。葬式の直後、彼女の夫は浮気相手と遊び歩いていた。一方、不破家の茜は奉公先の松前藩で、若様のお世話をすることになっていた。(明日のことは知らず) 仕えていた藩が改易になった男。知り合いの伝手を辿って再仕官しようとするが、なかなか上手くはいかず、次第に困窮していく。(「やぶ柑子」) 「不老不死の薬」を研究していた医者が亡くなった。彼の家には謎の物体が残されていたが、ひょっとしたらそれが高価なものかもしれないと思った家主は、伊三次に調べてもらうことに。(「ヘイサラバサラ」) 伊三次の周りの人々が、さらに身近に感じられる一冊。

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2.5 2018年01月27日

伊佐次の弟子の九兵衛がもう26歳になっていた。縁談話が持ちこまれても不思議はない年齢だ。九兵衛の父親である岩次から相談を持ちかけられたのだ。「九兵衞が嫁を貰うのは、早いだろうか」。思ってもない内容に伊佐次はうろたえた。相手は岩次が奉公する魚佐の末娘おてんだという。おてんが見染めたらしいが、相談を持ち掛けられた伊三次は、九兵衛におてんをどう思っているか真意を問い質す役目を引き受けるのだった。 本巻では、九兵衞とおてんの色恋とまでもいかない噺が心をくすぐるようで、誠によろしい。何がよろしいと言って、おてんの人柄である。これがとんでもないおキャンなのだ。下町娘の跳ねっ返り程度なら、まだ笑って済まされるが、おてんの生家は魚佐という魚河岸の仲買で、イナセで乱暴な男たちに混じって一歩も引けを取らずに商売を切り盛りしているのであった。町内の誰もがおてんは見かけは女だが、中身は男と疑ってもいない娘である。伊佐次でさえ相手がおてんと聞いて思わず「あちゃー」と漏らしたほどだ。そんなおてんが九兵衞に心を寄せて、親も応援したいと言っているそうだ。この恋物語がどう発展するのか、楽しみである。 男勝りの娘と言えば、もう一人いたはずである。蝦夷松前藩の奥女中奉公に上がった茜である。警護を任務にする奥女中は男名で、姿も男装である。藩邸で刑部と名乗る茜は、嫡子松前良昌の相手をすることが多いこの頃である。松前藩内部ではこの良昌を次期藩主に立てようとする派閥と良昌の健康状態に不安を持って次男章昌を担ぐ一派、さらには江戸藩邸奥向きに隠然たる力を持つお愛の方が産んだ三男勝昌を次期藩主に立てようとする一派が夫々の思惑の元に暗躍していたのである。そうとは知らずにお家騒動の渦中に放り込まれた茜であった。

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