コーランには本当は何が書かれていたか?
カーラ・パワー / 秋山 淑子
2015年9月28日
文藝春秋
2,090円(税込)
人文・思想・社会
女性はベールやヒジャーブで身体を覆い、肌を見せてはいけない。女性に教育を受けさせてはいけない。女性を打擲するのが夫の務めだ。ムハンマドが九歳の妻を娶っていたことは小児性愛の肯定だ。ジハードで死ぬと楽園の七二人の乙女という報酬を約束されている。コーランには、実はそんなことは一言も書かれていない!アメリカ人女性ジャーナリストが、友人のイスラム教の指導者とともに、コーランを実際に読む。
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(無題)
ジハードで戦死した者は、天国にいける。天国は緑なす木々に覆われ、果実は枝もたわわに実り、清らかな川が数多く流れて、快適な風がつねに吹きわたっている清浄なところである。天国行きを許された者にはいくら飲んでも酔わない美酒や最上の食べものがあたえられる。さらに、男性は72人の処女と交わることができ、彼女たちは何回性交におよんでも処女のままである。 自爆テロに走る若者はコーランに書かれたこの一節を信じて、喜んで死んでゆく。中東通を任じる知識人がこんな風に解説する。コーランには本当にこんな事が書かれているのだろうか、と疑問に思った人間がいた。信仰を持たないアメリカ人女性ジャーナリスト・カーラ・パワー、つまり本書の著者である。ジャーナリストの好奇心は、実際にコーランを読んで書かれている内容を自らが確認する手法をとった。彼女の水先案内人は、かつてオックスフォード大学イスラム研究センターでの同僚だったアクラムである。 ムハンマドが神の言葉を預かって、記録したのがコーランである。ムスリムにとっては、神の言葉そのものと言っても良い。では、そのコーランで神はジハードをどのように述べているのだろうか。以下に引用してみる。「それで諸聖月が過ぎたら、多神教徒たちを見出し次第殺し、捕らえ、包囲し、あらゆる道で彼らを待ち受けよ」とある。ビンラーディンがアメリカへのジハードを宣言した時にも引用された一節である。ところが、次に続くコーランの一節にはジハード戦士は触れようとしない。「だが、もし彼らが悔いて戻り、礼拝を遵守し浄財を払うなら、彼らの道を空けよ。まことにアッラーはよく許したもう慈悲深い御方」。これを読む限りでは、実に常識的で、ジハードの狂信性は感じられない。つまり、コーランは都合の良い部分だけ引用されていたのだった。 では、何故冒頭に挙げたような俗説が流布するのであろうか。分かりやすくするために、私がかつてエジプトに旅行した時のエピソードを紹介してみたい。ガイドの女性の話である。彼女はカイロ大学卒の才媛で、日本留学の経験もある。観光の途中、私は「利息」について話題を振ってみた。そうしたら、ピッタリ彼女の悩みのツボにハマってしまった。世俗化することで成功した国家として知られるエジプトのインテリでさえ、生活の中で西欧系の銀行を使うか、アラブ系の銀行に預金するかで悩んでいたのだった。日本人には理解しづらいが、利息を取ることは禁止されているのだ。だったら、アラブ系の銀行は太刀打ちできないではないか、との疑問も当然である。アラブ系の銀行は預金者から預かったお金を投資に回し、利潤を預金者に配当するから西欧系の銀行とも競争できる仕組みとなっている。こんな法の抜け道みたいな事を考えるのが、イスラム法学者の役割である。 このエピソードには、ムスリムを理解する上で重要な2つのヒントが隠されている。1つはムスリムの生活の隅々までがイスラム法で律されている事であり、2つ目がイスラム法学者の社会的地位の高さである。長い歴史の積み重ねは、彼らに原点であるコーランで確認するのではなく、法学者に尋ねる習慣を身につけさせたのだった。つまり、敬虔なイスラム教徒であっても、コーランを読もうとしないのだ。ここに俗説が堂々と大通りを闊歩する元兇が隠されていたのだった。
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toruo
(無題)
個人的にはかなり興味深く手にとってみたのだけど邦題にミスリードされたという印象。 信仰心の無い女性ジャーナリストがイスラム学者の元でコーランについて学んでみた、という本。 女性はモスクに行ってはならず全身を覆い隠さなければならないというのはコーランには書いてなく、その土地の風習がミックスされただけ、ということなどいくつかの点はコーランに記述が無い、ということはわかった。 しかし、女性は男性の管理下にあって場合によっては殴ってもいい、や、マホメットが9歳の子供を夫人の一人に加えたこと、多神教徒は殺してもいい、といった問題のある記述についてはかなり煙に巻かれた感じ。 また、学者がいかに素晴らしい人かという記述が多く、要点をもっと明確に書いて欲しいとも思った。 学術的な本と勝手に思い込んでたらエッセイだったのでギャップに戸惑ったというところです。
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