ファーストラヴ
島本 理生
2018年5月31日
文藝春秋
1,760円(税込)
小説・エッセイ
なぜ娘は父親を殺さなければならなかったのか?多摩川沿いで血まみれの女子大生が逮捕された。彼女を凶行に駆り立てたものは何か?裁判を通じて明らかにされる家族の秘密とは?
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(無題)
この物語には初めから大きな謎が二つ秘められている。ひとつは弁護士・庵野迦葉と 臨床心理士の真壁由紀の人間関係である。そこには恋人とはまた違う一種独特の雰囲気が漂うのだった。由紀にとって、迦葉は義弟ではあるが、夫・我聞と結婚する前からの因縁があったのだ。そしてもう一つが、本編の主人公・聖山環菜の殺人動機である。包丁で刺されて死亡した被害者は彼女の父親で画家の聖山那雄人であった。不可解なのは警察の取り調べに、環菜が「なぜ父親を殺したのか分からない」と述べていることである。 本作のテーマは幼児虐待である。生きづらさ感じる人、あるいは社会生活に順応し辛い人が幼児期に虐待を受けていたというのは、心理学的見地からは割と見受けられることである。例えば、リストカット。かつて私がうつ病で入院していた時に経験した事例を紹介しよう。ある朝入院患者の女性の手首に包帯が巻かれていたのを発見した。そういえばその前日、彼女の夫が面会に来て談笑しているのを見かけた。これは夫にもっと「構ってほしい」あるいは「私の方をもっと見つめていて欲しい」とのアピールと考えられる。ところが、事はそう単純ではない。自傷行為には、複雑な感情の錯綜もあるからだ。リストカットは心の叫びという一面もある。「わかってくれない」という気持ちが自傷へと走らせるのだ。これに対して周りがそれを問題行動と捉えれば、自傷行為はいつまでも続くことになる。 さて、環菜の腕には無数の傷跡が残る。そして、彼女の母親にも、それと分かる傷跡が刻まれている。本作は人の心の影に迫るものである。暗くて重い内容は、時として読者を不安の坩堝に引きづり込みかねない。そんな闇から解放してくれるのが我聞の人柄である。
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shogayaki0607
考えさせられた
虐待の問題の幅広さを実感した。暴力・暴言だけが虐待ではない。親は子供が必要としている愛情を注いであげなければいけない。子供の頃に受けた傷がいかにのちの人生までつきまとうか、がうまく表されていた。ただ、この作品の中の母親のように親も虐待被害者であったケースは多いので、親の心理面のサポートも虐待件数を減らすためには不可欠だと思う。
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