私家版・ユダヤ文化論
文春新書
内田 樹
2006年7月20日
文藝春秋
825円(税込)
人文・思想・社会 / 新書
ノーベル賞受賞者を多数輩出するように、ユダヤ人はどうして知性的なのか。そして「なぜ、ユダヤ人は迫害されるのか」。サルトル、レヴィナスらの思想を検討しながら人類史上の難問に挑む。
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(無題)
内田樹のこの本を読んでいなかったことに思い至り、早速手にとった。 著者にとってユダヤ人問題は、大学院生時代からのテーマで、ユダヤ人思想家レヴィナスを学問上の師と仰ぎ、訳書もある。この本では「なぜユダヤ人は迫害されるのか」という、欧米では問いにくい問題を論じている。ふつう社会科学では中立的に書かれるが、この本はそうなっていない。日本人という特権的な立場を利用し、ねじれたポジションからねじれた問題を書いた、と内田は語る。 内田はユダヤ人問題について深い知識を有しているわけではないと謙遜しながら、けれども「人間の邪悪さと愚鈍さはどのような様態をとるかについてなら、私はたいへん詳しい」と胸を張り、本書を「私家版」と名付けた理由を語っている。 「ユダヤ人迫害には根拠がない」と答えるのが「政治的に正しい回答」である。この問いに対して、「ユダヤ人迫害にはそれなりの理由がある」と答えるのは「政治的に正しくない回答」である。なぜなら、そのような考え方に基づいて、反ユダヤ主義者たちは過去二千年にわたってユダヤ人を隔離し、差別し、追放し、虐殺してきたからである。 ユダヤ人問題の根本的なアポリアは「政治的に正しい答え」に固執する限り、現に起きている出来事についての理解は少しも深まらないが、だからといって「政治的に正しくない答え」を口にすることは人類が犯した最悪の蛮行に同意署名することになるという点にある。 政治的に正しい答えも政治的に正しくない答えも、どちらも選ぶことができない。これがユダヤ人問題を論じるときの最初のそして最後までついてまわる罠なのである。この罠を回避しながら、なおこの問題に接近するための方法は問題の次数を一つ繰り上げることしかない。 今の場合、問題の次数を一つ繰り上げるというのは、「ユダヤ人迫害には理由がある」と思っている人間がいることには何らかの理由がある。その理由は何か、というふうに問いを書き換えることである。 ふ〜っ疲れた。ウチダセンセお願いしますよ。
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