国債破綻ドミノ 日本国はいくら借金できるのか?
文春新書
川北 隆雄
2012年2月20日
文藝春秋
858円(税込)
ビジネス・経済・就職 / 新書
欧州の金融危機は対岸の火事ではない。ギリシャよりはるかに深刻な財政状況を年に約30兆円増える借金がさらに圧迫。早ければ7年後には、国の借金が、個人金融資産1500兆円を上回る事態が生じかねないのだ。日本破綻の「Xデー」は近いー。
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(無題)
国債や借入金などの残高を合計した「国の借金」が1017兆9459億円となった。これを国民1人当たりにすると約800万円になる。これを家計や企業会計に引き当てて、危機的状況にあると考えるのは当然のことだ。借金がこれだけ積み上がると、普通の人には破産!が思い浮かぶが、国家の場合はデフォルトはないのであろうか。そんな事はないのであって、最近ではギリシャの例が挙がられる。政権交代したギリシャで、前政権の国家をあげての粉飾決算が明らかになった。過大な財政赤字は国債など政府債務の返済能力に疑問符がつけられ、国債市場で売り込まれて価格が急落した。いつ国債のデフォルトが起きるかもしれず、国家破綻の瀬戸際に立たされた。このため、政府は公務員の大幅削減や年金の給付削減などの過激な財政赤字削減策を実施せざるを得なかった。 それでは、我が国の財政赤字の水準は世界一であるにもかかわらず、国債は順調に消化され、長期金利も依然低水準のままであるのは、何故であろうか。国債を保有する国際金融資本は、その国債を発行した国家に信用不安が生じれば、躊躇することなく売却するだろう。日本国債についても同様である。ところが、日本国債の保有者の95%は国内の銀行や保険会社である。これら機関投資家が国債を購入する原資は、元を正せば個人の預金や生命保険料が集積されたものである。つまり、個人金融資産が国債の運用資金となっており、国債の事実上の担保と見ることができる。言葉を変えると、どんなに借金が多くても、それが身内からの借金であるうちは安全だ、ということだ。何故なら、国債デフォルトとなれば、資金の海外逃避を避けるために預金封鎖という奥の手も使えるからである。 そこで標題の『日本国はいくら借金できるのか?』との疑問に対しては、個人金融資産の総額1500億円までは安全だ、と一般には言われている。しかし、それをいつ迄維持できるのか、あるいはその水準を超えても信用不安を生じさせない手立てがあるのかないのか、そんな事は誰もわからない。
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