
人間の叡智
文春新書
佐藤 優
2012年7月20日
文藝春秋
858円(税込)
ビジネス・経済・就職 / 人文・思想・社会 / 新書
なぜあなたの仕事はつらく、給料は上がらないのか? TPP加盟はほんとうに悪なのか? 橋下徹氏にこの国をゆだねるべきか? こうした問題を解くキーワードが「新・帝国主義」です。いまや米露中、EUと中東は、「新・帝国主義」によって世界を再編し、国家のエゴ剥き出しで戦っています。 今こそ「帝国主義」という言葉の悪魔祓いをし、現状を冷静に認識するときです。食うか食われるかの帝国主義的外交ゲームの中で、少なくとも食われないようにすること。その武器になるのが、「人間の叡智」です。 ハイレベルな世界情勢をわかりやすく語りおろした、佐藤優氏、渾身の一冊。 ●第1章 なぜあなたの仕事はつらいのか 給料が上がらないわけ/3・11 国家が消えた瞬間/本質が見えてないTPP反対論/保護主義と移民の運命 ●第2章 今、世界はどうなっているか 何に怒っているのか不明な巨竜・中国/曖昧な帝国・イギリスに学べ/「プーチン皇帝」と北方領土返還 ●第3章 ハルマゲドンを信じている人々 終末思想のイラン大統領が核のボタンを押す日/北朝鮮とイスラエルの真意/新しい「東西対立」/とんでもない鳩山イラン訪問/日本は核武装すべきか ●第4章 『資本論』で人生が開ける 日米安保という「国体」/エリート層の崩壊と「脱原発」/宇野経済学で貨幣と労働がみえる/ゼロ成長社会脱出の処方箋 ●第5章 ファシズムと橋下徹 ハシズムとファシズム/「家政婦のミタ」が示すもの/実は独裁的な野田政権/物語の力とアイロニー ●第6章 どうやって善く生きるか 二つの古典をもて/「心が折れてしまう」人へ/マネー教育をしてはいけない/東大秋入学は国家の生存本能
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(無題)
インテリジェンスの世界に生きる人間は通常、闇から闇を渡り歩き世間に顔を晒す事はありません。ところが時代は著者を闇の世界で生きる事を許しませんでした。この結果、著者は言論界で生きる道を選び、インテリジェンスの凄まじさを白日の下に晒したのでした。インテリジェンスの世界から見ると、世界はこんなにもよく見えるのか、との実感を持って本書を読みました。著者の分析力は圧倒的です。米国やEU、中国などとの外交スタンス、軍事力、尖閣、沖縄基地問題等を新・帝国主義の観点から読み解いていきます。 著者によるといまの国際社会は19世紀末から20世紀の帝国主義に似てきているそうです。植民地獲得をめぐって列強が戦争をしていた頃ですね。今ではまさか植民地化できませんので、自国の利益を最大限に主張し、相手国が怯み、国際社会も黙っていると、理不尽なことでもごり押しします。尖閣諸島の領有権を巡って中国がやっていることを見れば納得できるでしょう。中国ほど露骨ではありませんが、アメリカも同様です。TPPでアメリカはアジア太平洋の支配を狙っているんですね。TTPについては賛否両論あるでしょうが、究極のところ、米・中どちらの傘下に入るかを我が国が選択を迫られているとしたら、中国の選択肢があるわけはありません。米国とは、あとは個別交渉ということになるでしょうし、中国とは戦略的互恵関係を維持するのが賢明な選択となるでしょう。また、ロシアの北方領土をめぐる態度も、イランの核開発も、彼らはみな同じ弱肉強食のルールにのっとって行動しています。 ですから、わが国はそんな時代をサバイバルしなければならないのです。生き残りのために必要な人間の叡智を、英語ではインテリジェンスといいます。インテレクチュアル(知性)とは、後天的に学習して身につけた知識です。 一方で人間を含む動物が、生き残るために必要となる情報や知恵は、すべてインテリジェンスです。断片的な知識をいくら持っていても、それは叡智にならないのです。日本型の受験秀才や、その結果である官僚の思考では通用しない所以です。 3・11以降、日本の危機はいっそう目に見えるものとなりました。いま、日本が国家としての生存をかけて身悶えしています。食うか食われるかの外交ゲームの中で、日本が少なくとも食われないようする、その処方箋のヒントが本書には秘められています。
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