「反米」日本の正体
文春新書
冷泉 彰彦
2015年4月20日
文藝春秋
858円(税込)
人文・思想・社会 / 新書
打算の政治を続ける日本と、まず理念ありきのアメリカ。歴史認識問題、沖縄基地問題、緊迫する東アジアなど複数のリスクが絡み、曲がりなりにも良好な関係を保ってきた日米関係は今危機にある。その根っこには何があるか。戦後日本に巣食う「反米」の正体を在米作家が読み解く。
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(無題)
英米関係を除げば日米両国は、世界の二国間関係の中でおそらく最も強く結びついた信頼関係を築いてきました。70年前には激しく戦火を交えていた事、その後の米国による占領があった事を考えると親密な両国関係は奇跡と言っても過言ではありません。そんな日米関係も、著者によると今や危機に陥っており、本書でその原因と対処法を明らかにしています。 戦後日本側で日米関係を担ったのは、いわゆる親米保守勢力でした。具体的に言えば、自由民主党ですね。もちろん自民党内も一枚板ではなく、石原慎太郎のような反米勢力も抱え込んではいましたが、政権中枢は常に親米でした。ところが、アメリカは第二次安倍内閣にいたるにおよんで、反米の影を見出していると筆者は指摘します。「歴史認識」や「歴史修正主義」という表現で語られる問題に対する安倍首相の態度及びアメリカがその事に不快感をあからさまにしても態度を変えようとしない事を指しています。筆者はこれを「ねじれ」と表現します。僕には我が国の歴代総理は、アメリカ要人が少しばかり声を荒げると豹変してアメリカに追従するのが常であったのに、安倍総理は一向に態度を改めようとしない事への「苛立ち」と言った方が当たっているように思えます。筆者はこの「ねじれ」乃至「苛立ち」がある事を日米関係の危機と感じていますが、僕には必ずしもそうであるとは思えません。著者は日米関係について「理念的な相互理解、理念的なすり合わせ、理念的な共闘関係という面が弱すぎるのだ」と本書で書いていますが、同盟関係にそのような「理念」は必要なのでしょうか。国益や国家の成り立ちが違っている以上、理念的な共闘関係を望む方に無理があると思います。これまではアメリカ追従か、さもなければ自主防衛、核武装しか選択肢が無いと思い込んでいたのですから、安倍さんは現実的でよくやっていると思いますよ。 ところで本書の感想ですが、さすがにアメリカ在住者の視点は日本に居ては持ち得ないものがあるなぁ、と感心しました。例えば、アベノミックスです。米国では、量的金融緩和など、中央銀行による市場経済への介入に反対するのは、民主党よりも共和党の方ですね。ですから、アメリカの政治環境の中では、アベノミックスは民主党の政策に近いように映るのです。日本のリベラルからみれば、違和感がありますね。ま、そんな指摘は鋭いなと思いましたが、全体的には何を言いたいのかよく分からない、といったところが正直なところです。
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