ブラック奨学金

文春新書

今野 晴貴

2017年6月20日

文藝春秋

913円(税込)

小説・エッセイ / 新書

容赦ない裁判での取り立て、雪だるま式に膨れ上がる延滞金地獄…… 学生をしゃぶりつくす“高利貸し”の正体! 突然、身に覚えのない多額の借金の請求書が自宅に届くーー。今、全国各地でこんなことが相次いている。奨学金を借りた若者たちが返済に行き詰まり、その保証人が日本学生支援機構(JASSO)に訴えられるケースが続発しているのだ。 長引く不況から、奨学金を借りる学生は増加し続け、いまや大学・短大生の約4割が奨学金を利用している。1人あたりの合計借入金額は、平均300万円以上にものぼる。新社会人の若者の約4割がこれほどの借金を背負って社会に出て行くのだ。 だが、大学を卒業しても奨学金の返済に窮する若者が急増している。その背景には、雇用情勢の不安定化や「ブラック企業」の存在がある。 滞納が一定期間続くと、JASSOは延滞分だけではなく、将来返済する予定の金額(元本および利子)も含めて、裁判所を通じて「一括請求」を行う。また、それら全体に「延滞金」が年間5〜10%もかかってくる。そのため返済額は膨れ上がり、400万円、500万円といった莫大な請求が、一挙に振りかかってくる。 借りた本人が返済できない場合、請求は保証人に及ぶ。奨学金の借入時には親族が連帯保証人及び保証人になることが一般的だ。両親はもとより、祖父、祖母、おじ、おばにまで請求がいくこともまったく珍しくはない。 延滞金は、訴訟が提起され、本人が自己破産し、保証人に請求が行くまでに雪だるま式に膨れあがっている。まるで、かつての消費者金融被害のような様相を呈しているのだ。 奨学金返済の延滞に対し、2015年度に執られた法的措置は、なんと8713件にも及ぶ。 なかには、本人が死亡したのに家族が訴えられたケースや、シェルターで暮らす女性にも容赦ない取り立てが及んでいるケースもある。 著者はNPO法人POSSEの代表を務め、これまで200件以上の奨学金返済の相談に関わってきた。本書では生々しい実例を豊富に紹介しているほか、すでに返済が難しくなってしまった人のために、どのように対処すればよいのかも詳しくアドバイスしている。

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