サウダージ

文春文庫

垣根 涼介

2007年8月3日

文藝春秋

759円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

故郷を捨て、過去を消し、ひたすら悪事を働いてきた日系ブラジル人の高木耕一は、コロンビア人の出稼ぎ売春婦DDと出逢う。気分屋でアタマが悪く、金に汚い女。だが耕一はどうしようもなくDDに惹かれ、引き摺られていく。DDのために大金を獲ようと、耕一はかつて自分を捨てた仲間ー裏金強奪のプロである柿沢に接触する。

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Readeeユーザー

(無題)

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2.9 2018年01月25日

絶望と歓喜、破滅と裕福な生活が紙一重のところで生きる柿沢と桃井、そしてアキが加わった裏金強奪団。緻密な計画と心身両面に渡る日頃からの訓練がもたらす冷静さと度胸が後一歩のところで彼らを破滅から救っていた。ところが今回はもう一人の若者関根が登場する。関根は始め、折田に見込まれて強奪団の仲間入りをする。しかし、少しずつ気心が知れるようになる中で、関根には違和感を感じるようになる。命を懸けて裏の世界と対決するのだから、何より大事なのは仲間の信頼感である。関根には最後の最後で信頼できないものがあった。事実、関根には秘密があった。人を殺し、その人物に成り代わっていたのだった。なぜそんなことをしたか、それは関根の出自に関わっていた。関根は結局破滅へ、柿沢と桃井、アキはそれを免れた。明暗を分けた原因を探るのも、本書はを読む楽しみの一つと考えられる。 アキと関根は若いだけに魂をむき出しにしていてわかりやすい。また、陰と陽とに対比して描かれてもいる。特に面白いのは、恋愛対象として選ぶ女性像の違いである。関根が性欲を感じるのは、コロンビア出身の売春婦BBである。最低の売春婦でありながら、性に貪欲でさながら野生の動物を思わせる。生命力と生活力が旺盛で、ワガママである。お金への執着は殊の外強い。一時の感情のままに振る舞うので関根は振り回され、時として足をひっ張られる。しかし、関根はこんな痰壷のような女しか愛することができない。 スポーツジムで桃井に紹介された和子は、アキがこれまでの人生で会った女の中で最も上等な女であった。もちろん、渋谷でストリートギャングのヘッドであったアキのこと、女に不自由したことはなかった。そんなアキが和子の前どは、まるで中学生が初恋をしたようになってしまったのだ。和子の感性と品性と頭の回転の速さに圧倒されてしまったのだった。 それにしてもこの二人、所詮は社会からドロップアウトしたアウトローに過ぎない。関根は幼少期、ブラジルでは貧しい移民の子としてイジメに遭い、来日してからはブラジル人として差別された経験の中から世間に対して漠然と恨みをのんでいた。アキの家庭は真面目一方の小市民的生活を送っていた両親であったが、バブルの崩壊とともに住宅ローンを支払われなくなり、自宅を手放したもののローンが残り返済を続けなけらばならないことに。社会の不条理を感じていた。そんな環境の中で2人とも闇の世界に入る動機は十分であったが、2人の明暗を分けたのは何だったのだろうか。

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