
キネマの神様
文春文庫
原田 マハ
2011年5月10日
文藝春秋
748円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
39歳独身の歩は突然会社を辞めるが、折しも趣味は映画とギャンブルという父が倒れ、多額の借金が発覚した。ある日、父が雑誌「映友」に歩の文章を投稿したのをきっかけに歩は編集部に採用され、ひょんなことから父の映画ブログをスタートさせることに。“映画の神様”が壊れかけた家族を救う、奇跡の物語。
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(無題)
はからずもまた、読みながら涙ポロボロの様相を呈してしまった。9回裏ツーアウトから満塁逆転ホームランの奇跡を起こす原田の小説は、読み終えた後に幸せな気持ちになれる。いつもの原田の小説ならではである。原田の好きなものは絵画、音楽、旅行、全てが小説のテーマとなっている。そして皆、上質な装いに包まれている。今回は映画である。この小説に登場する名画ぐらいは見ているが、映画、ドラマ、俳優といったら僕が最も苦手な分野である。 本作は映画好きの思いが渦巻く作品といって良い。円山郷直79歳。麻雀と競馬、そして映画を生涯の友として生きてきた。いや、そんなカッコ良い生き方ではなかった。とにかくあればあるだけギャンブルに注ぎ込んで借金まみれ、尻脱ぐいは妻と娘に押し付けて平然としているギャンブル依存症だ。こんな人が家族にいたら、家族ごと不幸であることは間違いないが、郷直が無類の映画好きである事は間違いないし、その血は娘・歩に引き継がれている。 郷直がゴウのハンドルネームでブロガーに転身する辺りからこの物語のテンヤワンヤが始まる。79歳でブロガー?。当然の疑問である。そこはチャンとサポートする人材が用意されている。引きこもりの天才ハッカーが管理人だ。ゴウのブログは映画への熱い思いが綴られる。勿論、文章修行をしたわけでもないし、高等教育を受けたわけでもない。そんなゴウが書くブログは、洗練されていないし、論理的でもない。何より評論の体を成していない。ゴウが書く映画ブログには、悪口が一切ないのが特徴である。映画作品への愛に溢れているのだ。そんな直截さがブログに適していたのだろう。 ゴウのブログは多くの映画ファンの共感を呼んだが、さらに英語版もアップされることになるのだった。そして、ここからがいよいよ佳境に入るのだ。謎の米国人がコメントを寄せるようになるが、その内容たるや並みの映画好きの域を超える知識と洞察力、洗練された文章は、大人と子供程の実力の差を見せつけるのだった。ゴウはどう対応するか、シャッポを脱いで教えを乞う体裁で、さらに新たな作品に触れる、するとそれにまた謎の米国人が否定的なコメントを寄せる、こんなスタイルが定着すると、このやり取りが評判にならないわけがない。超人気サイトへと成長するのだった。 この小説は、ゴウと謎の米国人ローズ・バッドの友情と時代の変遷とともにやがて消えゆく運命の名画座を取り巻く状況を描き出した作品であるが、ローズ・バッドの正体が明かされる辺りからエンディングにかけてが圧巻である。 このブログの人気記事
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Readeeユーザー
(無題)
★原田マハ『キネマの神様』。私世代には懐かしい映画のオンパレードで、映画評の部分だけでも読み応えがある、楽しみどころが満載の一冊。登場人物たちのそれぞれの再生の物語が、あふれる映画愛と共に描かれます。甘いばかりでないところが物語にリアリティを与えていて、良質の映画を観た後の幸福感につながる感情を呼び覚ましてくれます。とこかく、「ニュー・シネマ・パラダイス」が観たくなること間違いなしです(笑)
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