沈黙のひと

文春文庫

小池 真理子

2015年5月8日

文藝春秋

770円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

両親の離婚によってほとんど関わりあうことなく生きてきた父が、難病を患った末に亡くなった。衿子は遺品のワープロを持ち帰るが、そこには口を利くこともできなくなっていた父の心の叫びー後妻家族との相克、衿子へのあふれる想い、そして秘めたる恋が綴られていた。吉川英治文学賞受賞、魂を揺さぶる傑作。

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ユタージオ

些末な悪意の描写が秀逸

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3.2 2019年03月11日

「おんなの内面のどろどろしたやつ読みたい」この本が僕にとってはそれだったみたい。 女性の、内面のドロドロ感にすごく溢れてて、すっごくよかったけど、すっごく疲れた。 老けた気がする(笑)。 衿子の目を通して見た世界を疑似体験した気分になれる、この点で作家の筆力は 相当なものだと感じる。衿子の猛烈な自己肯定感。自分と、自分の愛する人を取り巻く 世界への怒りと諦念。強い自己肯定意識は、(衿子自ら選んだ)孤独や生い立ちに対する コンプレックスの裏返しであり”つよがり”なのだろうと僕は捉えている。 女性による女性蔑視とでもいうような面、高齢男性の性的な部分にしたり顔で理解した 気でいるような面、家庭を持たない人の狭隘さ・非寛容さ、衿子の無意識の悪意に いろいろと引っ掛かってしまっていった。 要するに僕は、主人公が嫌いになってしまったのだ。 嫌いな人格を通して見る世界は、それこそすべてが悪意に満ち満ちていている。 その狭量な判断基準に対しずっともやもやしながらも、人の価値観の多様さを感じ続けたし、 理解しえない他者を少しでも知り、それを赦す心の大きさを作る糧としようとも思い始めた。 何様目線だけど(笑)。 両親の老いという課題は、僕の目の前にももう寸前まで迫っていて、というかもう始まっていて なかなかに重いテーマ。機会ごとにいろいろと考えたりはするけれども、作中の主人公と同じく 老いと死というのは自分からはまだまだ遠く、他人事のようにしか捉えられない。 このテーマについては・・・書き掘り下げる器量がまだ僕にはないみたい。 何かことがおきてからでないと、本質的にとらえることができないことなのかもしれないよね。 日々成長していく娘、最近思春期の兆しが見え始めた娘との関係という、僕の中でのテーマ。 どう接したら、娘が大人になってからも、僕が老いてからも、良好な関係でいられるのか。 そんなことは日々の中で改めて考えることはないけれど、、、うーん、本当に何もないな。 答えが無いね。とりあえず容姿だけは娘が娘の友達に見られても恥ずかしくない程度には 気を付けようかな、てくらいだな。笑 なんだかいろいろとりとめもなくなったけど、本当に良い読書体験だった。 つよく共感したり、つよく反発したりの電磁石のような作品でした。

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