男ともだち
文春文庫
千早 茜
2017年3月10日
文藝春秋
781円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
29歳のイラストレーター神名葵は関係の冷めた恋人・彰人と同棲をしながらも、身勝手な愛人・真司との逢瀬を重ねていた。仕事は順調だが、ほんとうに描きたかったことを見失っているところに、大学の先輩だったハセオから電話がかかる。七年ぶりの彼との再会で、停滞していた神名の生活に変化が訪れるー。直木賞候補作。
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橘薫
こんな関係羨ましい
すごく好きか、すごく嫌いかで評価が分かれそうだな、と思う。 男女間の友情、というには二人の関係は深い。 それはもう、「ともだち」を超えている気がする。 しかしそこに男女の関係はもちろんないし、お互いに気の置けないあけすけな会話で、自分をよく見せようとか好きで居てもらうために媚びるとか手加減するとかがない。 つまり、本当に「素」を見せて見せられ、かつそれで嫌われるとか離れるとかの不安もないのだ。 普通、人は自分の嫌な部分を晒さない。 相手によく思われたい、嫌われたくないからだ。 神名とハセオは違う。 ありのまま、素のままで互いを受け入れて認めている。 それは、信頼以外の何ものでもないのだと思う。 この関係性に共感し、この本が宝物のように感じる方もいらっしゃるだろうし、最初から嫌悪感を出し、読み終えても「訳わかんなかった」という感想を持つ方もいるだろう。 それがご自身の「立ち位置」を明確にするという、恐ろしい本だ、これは。
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