ままならないから私とあなた

搭乗開始10分前に、旅のお供を探すものの小説は5種類しかなく、「何者」を過去読んだとの理由と、王様のブランチでの共演者への気遣いがなんとなく好きという理由だけで、手に取った…のですが、この出会い、純粋に嬉しい。 そう感じることもあるよなぁ、こうも感じるかもなぁと相手がどう感じるかを考え過ぎて、自分の意見がふわっと消えてしまう私には、決まりきったことなんて、何が正しいかなんて、そんなもの誰にもわからないと伝えてくれる「レンタル世界」からの、効率、デジタル、AI…と粒感違えど毎日進化する何かに追いつかないといけないと無意識に焦らされるコトバの数々にその先に何があるんだっけ？と言わんばかりの内容がなんだか、日常感じる焦りを和らげてくれた作品でした

【ままならないことがあるから、人間・・・・】 世界はデジタル化され、どんどん便利になっていく。誰もが使えて誰もがなんでもできて便利な世界。それが悪いわけじゃない。でもそれだけで本当にいいのだろうか？ 天才少女と呼ばれた薫は、意味がない、必要がない、と判断したものに、いっさい参加しない。 親友のユッコは、自分らしさを大切にする。 違うところがあっても、そのころは、まだ、一緒にいて楽しかった。。。のに。。。 できないことができるようになっていくなんて、もちろんワクワクする。世の中どんどん便利になっていくし、目標の達成に費やす時間や手間だって大幅に省ける。 だけど、 だからといって、 これは意味がないから、これは無駄だから、とあらゆるものを削ぎ落していったら、そこに残るものは、誰にとっても必要なもの、誰にとっても意味があること、それだけ。確かにあらゆることが無駄なく遂行できるようになるかもしれない。でも、そうなってくると、心も体も同じ形をした人間ばかりになるだろう。 うまくいかないから、面白かったりするんだ。 誰とも同じになれないから、わたしは誰かの何かを探し当てたい。 人間らしさ。 その人らしさ。 あなたらしさ。 自分らしさ。 人間であるあなたにしかできないこと。 簡単にはできないからこそ、大切なもの。 誰でもなんでもできるようになってしまったら、皆同じになってしまう。ままならないことがあるから、皆別々の人間でいられるのだろう。 【ままならないことがあるから、人間・・・・】 人間らしさをもとめる側と、ひたすら利便性を追求していく側、あなたはどちらに共感できますか？

薫に対して、雪子が自分の気持ちをゆっくり丁寧に伝えるシーンがとても印象的。

二十歳が始まった今、 こういうことがどんどん現れてくるんだな〜と感じて、 二十歳になるまでに、自分の中に薫とユッコどちらもいて、効率や合理的に的を求めすぎたり、あたたかいものに入れ込んだり、してとにかく葛藤して足掻いてきたような気がする。 それをぎゅっとした作品を今読めて良かった、

友情から恋愛から現在のライフスタイルから近未来の在り方まで色々書いてあって面白かった。

主人公とレンタル世界 雪子と薫 対比が鮮やかでわかりやすい作品だった。 人間の世界は曖昧さに溢れているが、テクノロジーの発展により、その曖昧さがどんどん排除されてる。これは歴史の流れでありこれからも続いていくだろう。 それに抗うことはできないが、その曖昧さの中になんとも言えない価値があることを再認識した。