
鼠異聞 下 新・酔いどれ小籐次(十八)
文春文庫
佐伯 泰英
2020年7月8日
文藝春秋
803円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
府中宿で久慈屋の荷が襲われた騒ぎの真相が明らかになると、北町奉行・榊原は同心の木津親子を呼び出した。一方、雨の降り続く高尾山ふもとに到着した小籐次一行だったが、薬王院の跡目争いの背後に渦巻く怨恨により、駿太郎ら少年たちの身にも危険が迫るー高尾の山中で、猿と“鼠”を従えた小籐次の竹トンボが鋭く舞う!
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(無題)
佐伯泰英を読み始めて何年になるだろうか。キッカケは入院中の無聊を慰めるためだったと記憶している。してみると、10年以上も前からの読者である。その間に全ての著作を読破しているのだから、一体何冊読んだことやら。何しろこの人は並の多作ではない。一時期は書き下ろしを毎月一冊出版していたのだから。それだけにマンネリに陥るのは致し方ないだろう。いや、そんなマンネリも読者に安心感をもたらすのだから、何が幸いするか分かったものじゃない。 さて、下巻に至り、子次郎が研ぎを依頼した懐剣の謎が明かされることになる。そして、上巻とはまた別口の騒動が持ち上がる。久慈屋が大量の紙を納めた薬王院有喜寺の内紛である。内紛というより現状に不満を持つ一派の横槍といった方が正確かもしれない。上巻に引き続き武闘場面は小藤次から倅の駿太郎に受け継がれ、代替わりが近いのかもしれない。 なお、小藤次と子次郎の間には、一種の連帯感が生まれ、今後も脇役として登場し続ける予感がする。
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