かわいそうな歴史の国の中国人

宮脇淳子

2014年7月31日

徳間書店

1,100円(税込)

人文・思想・社会

平気でウソをつき、ウソを本当にしようとする中国人の強さの秘密は、中華文明の弱さに理由があった。中国四〇〇〇年の歴史など存在しない!

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Readeeユーザー

(無題)

starstarstar 3.0 2018年01月25日

ここでは、中国人がかわいそうだとも、中国がかわいそうだとも言っていない。明らかに中国の歴史がかわいそうだと言っている。意表を突く言い方で興味を引かせ、本を売ろうとの魂胆が見え見えではあるが、それでも著者の言い分を聞いてみようか、との気持ちになる。 我々が普段使っている漢字、陶磁器、さらに火薬、羅針盤、紙といった三大発明も中国発祥で、日々その恩恵に浴している。中国伝来の文物で私たちの生活が成り立っていると言っても過言でなく、中国は日本文化の恩人と多くの人が思っている。中国を見習って取り入れたのは文物ばかりか、律令制など社会システムにまで及ぶ。中国発祥の制度で我が国が取り入れなかったものは、科挙と宦官ぐらいである。 それでは、我が国は何故この二者を導入しなかったのか、これは長い間僕の疑問であったが、本書には科挙を我が国が輸入しなかった理由が述べられており、興味深いので紹介しておく。それは我が国ではすでに9世紀にカナが発明されており、話し言葉をそのまま書けるし、ルビを振って漢字を読めるた。だから漢字の使い方の試験である科挙をする必要がなかった、のだという。 これだけでは分かりずらいので、若干の補足を要するだろう。先ず、中国にあっては北京の人と上海の人が喋っても言葉が通じないと言うことを理解しなければならない。香港でも同様である。同じ漢民族同士が話す中国語が通じないということは、日本人は理解しずらい。しかし、これは中国のテレビ番組に漢字のスーパーが入る意味を考えれば納得できるだろう。話し言葉が通じなければ、文字でコミニュケーションをとるのは当然だ。ところが、漢字は表意文字であるから、文字自体に様々な意味を持っている。その上、一つの文字が名詞にもなり動詞にもなる。主語、述語、目的語の並べ方に規則性がなく、文法も無いとなったらどう読んで良いか皆目見当がつかない事になる。このため、漢文を理解するには四書五経などの古典に通じて、古典中で漢字がどのように使われているか、との理解を前提として目の前の漢文を理解するわけだ。だから、漢文を理解し、文章を書く事が出来る官僚を輩出するために、科挙試験を必要としたのだった。 もう一つの宦官については、人間として扱われない宦官の存在を日本人の心性が許さなかったのだろうと、想像するだけである。 さて、日本人が中国四千年の歴史と言うとき、日本の歴史と引き合わせて一つの民族が連綿と続く一つの王朝を思い浮かべてはいないだろうか。中国の歴史を有体に言えば、食い詰めた農民が時の皇帝を武力で葬り去り、新たに皇帝位につく、或いは異民族による侵略戦争の結果、勝利した多民族が皇帝位につく事の繰り返しであった。武力闘争の結果、勝利した皇帝は自らの正統性を証明するために歴史書の編纂を命ずるのであった。そこに前政権の悪行非道ぶりが書かれ、その結果、前政権から天命が去り新王朝に天命が改まった、と記されるのが常だった。天命が改まるので革命。西欧の市民革命と区別して易姓革命と言う。 易姓革命が起こると、政策の継続性は一切無視され、昨日までの善が悪と変ずることも稀ではない。むしろ前王朝を否定するために普通に行われたことだ。このように価値判断の基準が180度変換することが起きれば、人は何を信じて良いかわからなくなる。いや、自分しか信じられないようになる。中国人の極端な個人主義や法治主義ではなく人治主義が生まれる根源がここにある。人を信じることができず、人を騙してでも儲ける人間が上等と信じる中国人は憐れでもある。そんな中国人を作り出したのが、中国四千年の歴史である。

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