殺人鬼フジコの衝動
徳間文庫
真梨幸子
2011年5月31日
徳間書店
712円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして新たな人生を歩み始めた十一歳の少女。だが彼女の人生はいつしか狂い始めた。「人生は、薔薇色のお菓子のよう」。呟きながら、またひとり彼女は殺す。何がいたいけな少女を伝説の殺人鬼にしてしまったのか?精緻に織り上げられた謎のタペストリ。最後の一行を読んだ時、あなたは著者が仕掛けたたくらみに戦慄し、その哀しみに慟哭する…。
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(無題)
小説の第1章から3章までと、最終章はフジコの娘、サキコの視点。それ以外はフジコの視点。 第1章〜3章はサキコの名前は(あえて)出ず、次からのフジコ目線の章が続きみたいに見えるようになってる叙述トリック。 家族全員が惨殺され、フジコは叔母(フジコ母の妹)に引き取られる。親に虐待されていたフジコに苦労をさせたくないと親身になってくれる叔母だったが、フジコに優しい言葉をかけると同時に、執拗に「あなたは母親に似ている」「母親のようになっては駄目」と言い続ける。 真相は、この叔母がフジコ母に保険金をかけて自分と同じカルト宗教信者であるコサカさんの母親に、家族もろとも殺させたのだった。手に入れた保険金はカルト宗教のお布施にしていた。叔母は過去に保険営業の仕事をしていた。 幸せになりたいと願って行動するフジコだが、付き合う人間がことごとくクズ。この作品でまともな人間って杏奈(フジコの親友)だけだったのでは…??フジコ自身も短絡的で、病的な見栄っ張りのせいで周りに助けも求められず、どんどん落ちぶれていく。小5で初めて人を殺すが、その後も殺された杏奈の死体を処理したりして感覚が鈍っていき、殺すときの判断基準がどんどん低くなっていく。簡単に人を殺すようになる。 一度はバブル景気のおかげで金持ちになるが、景気が弾けてたちまち元通り。というか、夫の収入はそこそこあるのに、裕福だった頃の感覚が戻らず、浪費するために余裕がなくなる感じ。 初めての子供は虐待死、再婚後に授かった子ども2人(サキコとミヤコ)にも経済的ネグレクト、暴行など。 子どもへの仕打ちはまさにフジコ自身が受けてきたものと同じ。この小説は一貫して親から子へと継がれるカルマを題材にしている。 ついには自分の夫を殺してそれをサキコに目撃され、サキコは殺さなかったものの捕まり、これまでの罪が明るみになって死刑が確定する。 この事件もまた、フジコの叔母がフジコの夫に保険金をかけていた。フジコに度々接触し、言葉で追い詰めて殺しに誘導したような感じ。 サキコはフジコによく似ていて、自分の意見はなく、周りの顔色を窺いながらそのときに求められている行動をとることで周囲に認められようとする。かなり二面性がある。 フジコ逮捕後、大叔母(フジコの叔母)に引き取られるが、カルト宗教の広告塔に仕立て上げられ、殺人鬼フジコの娘として表舞台に立ち続けるサキコは、取材を重ねて藤子の生涯を小説にまとめ、自殺未遂を起こした末に死ぬ。ここでもサキコは大叔母に保険金がかけられていた。 反面、妹のミヤコは両親からの虐待は受けながらも無邪気で、姉にも遠慮しない。サキコはミヤコのわがままをいつも受け入れている。1章〜3章ではサキコ目線の物語なので、このミヤコが自分本位で、サキコが姉としての分別があってかわいそうな子に見えるのだが、実際はミヤコは子どもとして健全な精神を持っていて、サキコの方が拗れていることがあとがきでわかる。大人になったミヤコはこの作品では数少ないまともな人間だった。まともであるが故に、事件の真相をシゲコ(フジコの叔母)に問いただした後、殺される。 親から継いだカルマを背負って生きたフジコだが、叔母のシゲコもまた、カルマを背負う者だった。という話。 残酷な描写が多いし救われないイヤミスだけど、なぜかスイスイ読めてしまった。嫌われ松子の一生を思い出した。
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