短篇ベストコレクション
現代の小説2014
徳間文庫
日本文芸家協会
2014年6月6日
徳間書店
770円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
2013年に発表された中から、当代の読み手が選んだ名作14篇!新鋭からベテランまで、“いま”を代表する実力派作家が揃いました。ミステリー、ファンタジー、恋愛など、テーマや時代背景はさまざまですが、共通してどの物語からも“読む”ということの楽しさを再発見できるはず。短篇という限られた枚数だからこそ描くことのできた味わい深い物語の数々。
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(無題)
熟年離婚と言ったら、妻と母親の役目を終えるまで我慢に我慢を重ねてきた妻と我儘で鈍感な夫を思い浮かべてしまうものだ。そして妻から離婚を言い出されて、何故なのかさえ理解できない夫の哀れな老後だろうか。このアンソロジーに収録されている原田マハの「無用の人」には、そんな夫が描かれている。無用の人と世間からも妻からも見られれて一生を終えたのが、主人公聡美の父親であった。今年50歳になる聡美は、千葉県佐倉の私立美術館の学芸員である。聡美がこの仕事を選ぶそもそものキッカケは、父親が愛読していた岡倉天心の茶の本であった。聡美は父の美意識に反発して現代美術を勉強し、それを一生の仕事とした。聡美が勤める美術館に訪ねてきた父親が聡美に漏らす一言「こんな素晴らしい美術品に囲まれて仕事が出来るなんて幸せだな」が印象的だ。つまり聡美の父親は美を感じる感受性を持っていたが、美を語ることはしなかった。一生をうだつの上がらない男として過ごしたのだ。そんな父親が死の間際、聡美の50歳の誕生日にプレゼントを残した。この短編を読んで思い浮かんだのは、宮澤賢治の「雨ニモマケズ」だ。 ミンナニデクノボートヨバレ ホメラレモセズ クニモサレズ サウイフモノニ ワタシハナリタイ 本書は2013年に発表された短編の中から、日本文芸家協会が選んだ14篇が収録されたアンソロジーである。原田以外は面白いと思えるほどのものはなかったので、割愛することにする。
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