ビオト-プの構造

ハビタット・エコロジ-入門

杉山恵一 / 福留脩文

1999年12月31日

朝倉書店

5,500円(税込)

科学・技術

わが国における身近な自然環境とは、決して原生的なものを意味するものではなく、何千年間かにわたって耕作されてきた水田とその周辺を意味するものである。しかしながらこのような環境での生物は種・個体ともにきわめて豊富であり、いわゆる共存的環境の典型をなすものであった。それは、各種生物のハビタットとしての複雑な自然の構造が最近まで最小限の変化しか蒙ってこなかったことに加えて、人間によって作りだされたあらゆる構造物が、自然材の手づくり的なものであり、むしろ野生生物のかくれがや巣づくりの場を提供してきたことによるものである。一方海域においても、複雑な海岸線を持ち、多様な生態学的意味を持つ環境構造が最近まで保たれたことによって、沿岸生物相はきわめて豊かな内容を持つものであった。これらの基本的要素が、いかに急速にいかに徹底的に破壊されてきたかについては今ここに改めて記すまでもないであろう。本書はそれらの原状における生態学的意味、つまり各種生物のハビタットとしての役割について述べるとともに、人間の手によって失われたそれらをいかにして復元するか、あるいは人工物によって代替させるかについて述べたものである。

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