
自殺
末井昭
2013年11月1日
朝日出版社
1,760円(税込)
人文・思想・社会
母親のダイナマイト心中から約60年ー伝説の編集者が、ひょうひょうと丸裸でつづる。大人気連載、ついに書籍化。笑って、脱力して、きっと死ぬのがバカらしくなります。
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(無題)
NHKのラジオ深夜便に著者の末井昭が出演して自分の事を語っていた。小学生の時、母を自殺で失ったという。しかも年下の不倫相手とダイナマイト心中したというのであるから、激しい母親である。そんな母親の血を引く著者、幼少期に自殺で母親を亡くした少年の人生とはどんなものだったのだろう、と興味を感じて本書を読み始めた次第。 本書は『面白く読める自殺の本』を目指して書かれたというのだから、おそらく前代未聞であり、類書は見当たらない。内容を一言で言えば、人の生き死にをめぐるエッセーである。著者は1948年生まれの私と同世代。年輪の積み重ねばかりか、人生の修羅場を何度もくぐり抜けているので、この人の生死観は透明で思いやりに満ちている。もう一つ、この人の立ち位置は反権力で常に自由を希求している。その寄ってきたる所以を考えると、ひとつには70年安保の洗礼を受けていることが上げられる。これは同世代人として理屈抜きに納得だ。それと「写真時代」の編集者として猥褻を巡って日常的に警察権力と渡りあった経験が大きく物を言っているのではなかろうか。 反権力などと大袈裟な事を言うまでもなく、著者は世間という得体の知れない強迫観念で自分を追い詰めることの馬鹿馬鹿しさから読者を解放しようとする。世間は常識のある善良な人を歓迎するが、真の人間を嫌う。真の人間とは、人間らしく生きることを望み、人としてどうしたらいいかを問い直し、その答えを求めようとする人である。世間にどうしても収まることができず、その軋轢で自殺を考えている人は、世間に背を向けて生きればいいのではないか。それが自由だ、と。 著者は「パチンコ必勝ガイド」を世に送った知る人ぞ知る鬼才編集者である。エロかと思うと神や聖書が登場し、借金地獄の毎日も人を傷つけた過去も包み隠さず曝け出す。わが身に引きつけて考えると、どうしてここまでできるか、と思ってしまう。私なぞは、恥ずかしくて墓まで持っていこうと思う話は1つや2つではおさまらない。
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