循環器ジャーナル Vol.70 No.1

心筋症診療のフロントライン 概念から最新の治療まで

北岡 裕章

2021年12月27日

医学書院

4,400円(税込)

医学・薬学・看護学・歯科学

疾患の病態を理解し、患者のQOLや予後の改善のためには、正確な診断が重要なことは言うまでもない。心不全は循環器疾患の中でも解決しなければいけない課題の一つであるが、日常診療では、左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)と左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)の診断止まりで、それ以上の鑑別診断が十分なされていない場面にも遭遇する。心不全管理という観点からは薬物治療やデバイス治療はどのような病因であっても共通する部分も多いが、本来的な治療のためには、その原因疾患に応じた治療も極めて重要である。心筋症は心不全の原因として大きな位置を占める。心筋症の概念や定義が、世界的に混沌としているのは事実ではあるが、少なくとも病因の解明や正確な鑑別診断が重要であることは不変である。  そのなかで、2019年に「日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン 心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)」が発刊された。本ガイドラインはわが国における診療実態に即した新しい心筋症の定義を示し、さらに近年の診断や治療における進歩を取り入れ,日常臨床の参考になるガイドラインを目指した。本ガイドラインでは、今まで以上に家族歴/遺伝的背景の勘案、二次性心筋症の鑑別を求めている。その理由は、多くの心筋症の発症に遺伝子変異が関係すること、原発性心筋症と二次性心筋症では、一見形態や機能が類似していても、病因はもとより、予後や治療が全く異なることがあるためである。  例えば、肥大型心筋症の患者の10年生存率は90%程度であるのに対し、同じ肥大心である心アミロイドーシスの予後は不良である。治療においても、肥大型心筋症と心アミロイドーシスでは、日常臨床でよく使用される薬剤やデバイスの適応は異なるし、後者においては疾患特異的な治療が近年急速に進歩している。  これらのことを踏まえて本特集では、心筋症の入り口として形態・機能異常や不整脈を想定し、そのような異常に遭遇したときに、どのような点に注意して心筋症を正しく診断するか、そしてよりよい治療に迫るにはどうすればよいかを目的として、専門家の先生方に解説していただいた。原発性および二次性心筋症を正確に診断し、適切に治療することで患者さんに益することが大きい時代になってきた。本企画が、心不全や心筋症診療に関係するすべての皆様のお役に立てれば幸いである。

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