エコロジカルな心の哲学

ギブソンの実在論から

双書エニグマ

河野 哲也

2003年6月10日

勁草書房

3,190円(税込)

人文・思想・社会

本書は、ギブソンの生態学的心理学に見出せる独自の認識論(直接知覚論)、存在論、行為論などを明らかにし、それらを「生態学的立場の哲学」として提唱するものである。20世紀後半の心理学は、行動主義から認知主義へ転換したといわれる。今盛んな認知科学などは認知主義に基づいている。本書でのギブソンの評価は、この認知主義をも批判する更にラディカルなものであり、認知科学の第三世代と呼ばれる最先端の潮流と結びついている。全五章のうち前半三章でギブソンの仕事を解説し、後半二章で志向性、自己というテーマを解明している。 序 論 知覚とエコロジー  1 本書の目的  2 第三世代の認知科学とギブソン  3 心は個体のなかにあるのか  4 どこから見た科学なのか  5 生態学的立場の哲学  6 「エコロジカル」という意味  7 本論の展開 I J・J・ギブソンの隠れた哲学 第一章 ギブソンの直接知覚論  1 序:認識論としての直接知覚論  2 間接知覚論の伝統  3 直接知覚論とは何か  4 行動主義とゲシュタルト理論のあいだで  5 奥行き知覚の大地説  6 生態光学:包囲光・移動視・知覚系  7 直接知覚への批判  8 知覚はどこに生じるのか  9 脳は情報を受信しないし、命令を発信することもない  10 知覚的情報は伝達されずに外界にある  11 記憶の役割 第二章 アフォーダンスと行為の理論  1 アフォーダンスとは何か  2 アフォーダンスの知覚  3 アフォーダンスについての誤解と批判  4 アフォーダンスの実在性  5 リード流のアフォーダンス解釈は正しいか  6 人工物のアフォーダンス  7 アフォーダンスと行為 第三章 生態学的物理学:ギブソンの存在論  1 生態学的物理学と存在の階層性  2 存在論的な多元主義  3 実在していることの基準とはなにか  4 ギブソンのディスポジショナリズム  5 アリストテレス主義:実在しているのは過程である  6 自然法則の局所性  7 歴史をもった自然 II 生態学的立場から 第四章 志向性と表象  1 志向性という問題  2 志向性と心的行為  3 ブレンターノの志向性  4 志向性の行為説と生産説  5 表象の正体  6 表象主義と記憶  7 表象の認知科学ではなく、表現論・技術論へ  8 ロボットからの計算主義批判  9 運動志向性と身体図式  10 アンスコムの「観察に基づかない知識」  11 志向性とは意図のことである 第五章 エコロジカルな自己  1 ギブソンの自己知覚論  2 世界を隠すものとしての自己  3 感覚的性質  4 パースペクティヴと世界  5 さまざまな自己概念  6 形而上学的自己  7 「わたし」の機能  8 形而上学的自己の語用論的な解消  9 デカルトのコギト:問題の原点 あとがき:ブリュッセルからアルゴンキンへ 参考文献表 事項索引 人名索引

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