
ナッジ!?
自由でおせっかいなリバタリアン・パターナリズム
那須 耕介 / 橋本 努
2020年5月28日
勁草書房
2,750円(税込)
ビジネス・経済・就職
朝日新聞 2020年6月13日(評者 石川尚文氏 朝日新聞論説委員) 2020年5月刊行 2020年11月好評4刷出来! それは「支援」なのか「操作」なのか? 強制にも説得にも頼らない社会改革の新技術とその思想を、気鋭の論者たちが問いただす! 「個人の自由な選択」を妨げることなく、愚行には歯止めを、賢明な行動には支援を? 肥満の解消、婚活のサポート、個人情報の保護、民主政の活性化……。世界の袋小路を切り抜ける仕掛けを示すスマートな戦略の宝庫、いま注目の「ナッジ」と「リバタリアン・パターナリズム」の光と影を、過去・現在・未来にわたって解き明かす。 はじめに ナッジ!? 強制と放任のあいだで[那須耕介] 1 「ナッジ」、生まれる 2 わきあがる不安と不信 3 この本のもくろみ 第1章 自己決定権は生き残れるか?[若松良樹] 1 肥満が止まらない 2 肥満の原因は何か? 3 どのような規制手法が望ましいか? 4 問題解決のために 5 結局、自己決定権は生き残るのか? 第2章 ナッジはどうして嫌われる? ナッジ批判とその乗り越え方[那須耕介] 1 「婚活」ナッジ? 2 ナッジの内在道徳 3 相互ナッジの海へ 4 「ナッジとはなにか」から「よいナッジとはなにか」へ 第3章 それでもアーキテクチャは自由への脅威なのか?[成原慧] 1 アーキテクチャ観の変容:自由への脅威から自由の礎へ 2 自由の礎にひそむ自由への脅威 3 ナッジの法的統制 4 アーキテクチャと自由の二面性に向きあい続けること 第4章 民主政は可能か? 合理性と「個人」の再設計[大屋雄裕] 1 私は合理的か? 2 個人と集団のあいだに 3 個体から個人へ 4 我々は合理的か? 第5章 熟議をナッジする?[田村哲樹] 1 水と油か? 2 熟議のためのナッジ 3 熟議のためのナッジは望ましいのか?:疑問と意義 4 それでもナッジは「危険」か? 第6章 カフェテリアをデザインする あなたは何派?[橋本努] 1 生活スタイルに埋め込まれているもの 2 どの指針が望ましいか 3 成長論的自由主義の立場 第7章 「リバタリアン」とはどういう意味か? リバタリアニズム論の視角からみたリバタリアン・パターナリズム[福原明雄] 1 リバタリアニズムにとってリバタリアン・パターナリズムとは何か? 2 リバタリアニズムの正義構想からの視線 3 リバタリアニズムの自由論からの視線 4 ナッジにとって自由の要点とは何か? 第8章 自律にはナッジで十分か? パターナリズム論の視角からみたリバタリアン・パターナリズム[瀬戸山晃一] 1 リバタリアン・パターナリズム登場以前のパターナリズム論 2 リバタリアン・パターナリズムの登場 3 強制的パターナリズム論 4 強制的パターナリズムとパターナリズム規制のアーキテクチャ 5 パターナリズム論の今後の展望:リバタリアン・パターナリズムを超えて もっと知りたい人のためのブックガイド おわりに ナッジ論の初心とこれから[那須耕介・橋本努] 索引
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何を目指して設計するか?
リバタリアン・パターナリズム、ナッジについての議論。一定の思惑に向け誘導するナッジは政治やビジネスに有効な手段であるがあくまで選択の余地があるのが前提であり、強制ではなく誘導であるのがポイント。しかしあくまで「リバタリアン=自由」が基本にあるので、自由とは何か?何を目指すか?という根本の議論を熟慮する必要があり、そこが曖昧だと危険ともいえる。ただ行動経済学的に、人間はあくまで合理的判断のみで行動するわけではない存在なので、そのあたりも併せ議論すべきだろう。
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