三島由紀夫幻の遺作を読む

もう一つの『豊饒の海』

光文社新書

井上隆史(日本近代文学)

2010年11月30日

光文社

902円(税込)

人文・思想・社会 / 新書

三島由紀夫は昭和四十五年十一月二十五日、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自殺を遂げた。その死の当日、遺作となった小説『豊饒の海』の第四巻『天人五衰』の最終原稿が、編集者に渡された。ところが、「創作ノート」と呼ばれる三島のノートには、完成作とは大きく異なる内容の最終巻のプランが検討されていた。近年、調査が進んだ「創作ノート」と、『豊饒の海』の重要なテーマである仏教の唯識思想に基づいて、三島が検討していた幻の第四巻の作品世界を仮構し、そこから三島の自死の意味と、三島文学が書かれ、かつ読まれた場である戦後日本の時空間について再考する意欲作。

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