五家狩り
夏目影二郎始末旅
光文社文庫
佐伯泰英
2003年6月30日
光文社
649円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
鬼子母神の祭りの夜、夏目影二郎は二名の武士が斬られるのを目撃した。状況から徳川御三家尾張藩の内紛と察知した彼は、父の大目付・常磐豊後守秀信に報告。その後、御付家老として御三家に配された五家の陰謀を知った秀信は、影二郎に密命を下す。五家を背後で焚きつける人物が?尾張に潜入した影二郎一行を次々と危難が襲う。益々快調の、痛快時代活劇。
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(無題)
夏目影二郎始末旅シリーズ第七弾。短編が二つに、中編が一つといった構成。 最初の短編は、後の桃井道場四代目・桃井春蔵直正となる田中甚助豊秋を登場させるための物語。そして、次の短編は異母妹の紀代の縁談に絡む話。常盤家の中で、父を除いて、数少ない影二郎の味方ともいえる紀代。 天保十二年。若菜と出かけた影二郎の前で、二人の侍が七、八人の侍に追われ斬られた。この事件のあらましは、父・秀信に伝えておいたが、尾州が絡むとなると、相手は御三家。慎重な動きが必要となる。 そうした中、辻斬りが横行しているという。しかも名のある道場の高弟が襲われている。アサリ河岸の桃井道場でも、小天狗と呼ばれている田中甚助豊秋が辻斬りなにするものぞと息巻いていた。後の桃井道場四代目・桃井春蔵直正である。 妹の紀代が影二郎を訪ねてきた。 許嫁の浜谷清太郎が年上の女性に骨抜きにされてしまっているのだという。この事を知った義母の鈴は激怒しているという。困り果てて相談にやってきたのだ。 その清太郎がうつつを抜かしている女は小人目付の娘・お桂であった。 影二郎が父・秀信に呼ばれて聞かされたのは、先だっての尾州に絡む話。ここで五家のことを聞く。五家とは御三家御付家老で、尾張の成瀬隼人正家、竹腰山城守家、紀伊の安藤飛騨守家、水野対馬守家、水戸の中山備前守家をいう。 この五家は本来、尾張や紀伊、水戸の家臣という家柄ではない。そのため、この五家には不満がくすぶっている。大名になるための運動を始めたというのだ。 秀信は、尾張犬山に行けという。だが、今回の命は曖昧としたものであった。というのは、水野忠邦がこの五家の大名昇格運動で一端の役割を果たしていたからである。 尾張に入った影二郎一行。菱沼喜十郎、おこま、小才次らが探索に奔走した。そうした中、小才次の行方がわからなくなった。一同が小才次の行方を追い始めた中、影二郎は三枝謙次郎と名乗る武士から尾張の内情を聞くことが出来た。そして、そこに金鉄党と呼ばれる者達の話も聞かされる。
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