鉄砲狩り

夏目影二郎始末旅

光文社文庫

佐伯泰英

2004年10月31日

光文社

628円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

幕府の練兵場で演習の最中、十挺の鉄砲と設計図が盗まれ、幕閣を揺るがす大騒動に発展した。夏目影二郎と若菜は、墓参中の川越で父の大目付・常磐秀信の命を受け、鉄砲探索に乗り出す。事件の背後には、西洋嫌いの妖怪・鳥居耀蔵の影が!?その渦中、若菜が何者かに拘引された。救出に向かう影二郎の前に、痩身の剣士が…。超人気の始末旅シリーズ。

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2.4 2018年01月29日

夏目影二郎始末旅シリーズ第八弾。新たに老中となる信濃藩主の真田信濃守幸貫は、幕末の名君の一人で、松平定信の次男である。 この人物の登場は、二年後に失脚する水野忠邦を見据えてのことか。この水野の失脚の時に、妖怪こと鳥居耀蔵がこのシリーズでどのような行動をとるのかが興味深い。 さて、今回の舞台となる、若菜のふるさと川越。天正十八年。徳川家康が関東に入った時に北の守りとして白羽の矢が立った場所である。譜代を配し、江戸の防備の要となっており、天台宗の関東総本山喜多院に天海僧正を配し、軍備と信仰の要として江戸を守護することになる。 この喜多院の南に仙波東照宮が造営され、久能山、仙波、日光を称して三東照宮と称えられるそうだ。 天保十二年。武蔵国徳丸ヶ原の幕府練兵場に砲声が響いた。高島秋帆による最新の西洋の武器の試射である。西洋の技術の進歩を知らしめるものだった。 夏目影二郎は若菜と約束していた川越の墓参りにいくことにした。 その途中で影二郎は不審なやりとりの現場を目撃してしまう。さらに、蝮の幸助にも出会う。蝮の幸助は影二郎に大騒ぎがあったことを告げる。試射の場で、最新の鉄砲が盗まれ、上へ下への大騒ぎだというのだ。しかもこれには妖怪こと鳥居耀蔵が絡んでいるようだ。 そして再び蝮の幸助が告げるには、影二郎が見かけた不審な連中は新鉄砲屋敷と呼ばれるところに入っていったそうだ。 こうしている間に、江戸から小才次がやってきて父・秀信からの伝言が伝えられる。それによると、試射の場で盗まれたのは、エンフィールド銃十挺とカノン砲の設計図だという。これを取り戻せというのだ。 動き始めた影二郎。さっそく川越藩からの監視が始まった。そこを助けたのは、かつて若菜を初めて訪ねる時に出会った内海六太夫老人だった。この老人、隠居ではあるが、かつてはそれなりの地位のあった人物であった。 その内海老人に隠し立てせずに影二郎はことの顛末を語った。すると、どうやら川越藩の意思として動いているわけではないようだ。家老の家系につながる因幡家が裏で動いているようだ。 こうした中、若菜が拐かされた。そして、あかも消えた。どうやら、あかは若菜を追跡しているようだ。 影二郎は苛立つ気持ちを抑え、必死に情報の届くのを待った。徐々に情報が入り始め、若菜の足取りがつかめ始めた。と同時に、エンフィールド銃十挺とカノン砲の設計図の行方が同じであるようでもある。 本書で印象深く書かれているのが、国定忠治一家である。影二郎とは互いに助け助けられの関係できた仲であるが、段々と追いつめられ始めている。 ここに登場したのが、国定忠治を追いかける八州廻りの中川誠一郎。今後、国定忠治一家の最期まで関わる重要な人物である。 ところで、国定忠治を捕まえたのは、中山誠一郎ではなかったか?それとも、この「中山」というのは講談での名前で、実在の人物は「中川」なのだろうか? 今後の展開にもつながる新しい人物たちも登場し、シリーズの中で一つの転換期を迎えようとしている感じである。

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