月下の恋人
光文社文庫
浅田次郎
2009年9月20日
光文社
607円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
恋人に別れを告げるために訪れた海辺の宿で起こった奇跡を描いた表題作「月下の恋人」。ぼろアパートの隣の部屋に住む、間抜けだけど生真面目でちょっと憎めない駄目ヤクザの物語「風蕭蕭」。夏休みに友人と入ったお化け屋敷のアルバイトで経験した怪奇譚「適当なアルバイト」…。珠玉の十一篇を収録。
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(無題)
浅田次郎の、真骨頂は何といっても長編にあるのだろうが、本書は11編からなる短編集。ただし、どの物語にも共通点がある。それは読者に物語の行先を委ねるような終わり方をしているところだ。だから「これで終わってしまうの、勘弁してよ」と思わされてしまう。それでも、読んでいて非常に興味をそそられたのが「風繍繍」。高倉健の「唐獅子牡丹」は司馬遷の史記「剣客列伝」のパクリ論だ。これは覚えて置いて酒の肴に使ってやろうと思った。また「忘宿」は短編でなければ書けない作品だ。このストーリーを長くして行ったら物語に齟齬を生じてしまうこと必然だ。その他、どの作品も幻想的で、登場人物は皆不器用で生きることがあまりうまくない人たちばかり。正に浅田ワールドで、面白いのだが、読者のために「もう少し書き足してよ」という部分もある。でないと「何なのこれ」となりかねないからだ。小説は読者に読まれてナンボの世界なのだから、読者を置いてきぼりにしすぎると、あとでしっぺ返しがきますよ。アサダさん。
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