ソウルケイジ
光文社文庫
誉田哲也
2009年10月31日
光文社
836円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
多摩川土手に放置された車両から、血塗れの左手首が発見された!近くの工務店のガレージが血の海になっており、手首は工務店の主人のものと判明。死体なき殺人事件として捜査が開始された。遺体はどこに?なぜ手首だけが残されていたのか?姫川玲子ら捜査一課の刑事たちが捜査を進める中、驚くべき事実が次々と浮かび上がるー。シリーズ第二弾。
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(無題)
ストロベリーナイトに続く姫川玲子シリーズ第2作。第1話ではガンテツこと勝俣健作にきりきり舞いされられた玲子であったが、本作でも天敵・日下守とのガチンコ勝負が面白い。一つの捜査本部で同じ警部補で捜査主任の2人が勝負しあうのは何故か?。まず考えられるのは、手柄争いであるが、この2人に限ってはそうではない。1番的確な表現は生理的に馬が合わない、この一言に尽きる。そして2者の差異は捜査手法の違いとなって表れる。 玲子は直感的なヒラメキや勘を働かせて筋読みをし、真実に迫る事で事件を解決してきた。一匹狼で職人的な刑事で、昔ながらの刑事によく見られるタイプだ。筋読みが当たると迷宮入りと思われる事件も鮮やかな解決を見ることになる。反面、筋読みにこだわると冤罪すら生みかねない。これに対して日下の捜査手法は地どりや鑑どりに基づく事実を着実に積み重ね、予想や思い込みといった人間的要素を排除して犯罪に肉迫していくのだった。日下に言わせれば、犯罪捜査に予断を持てば誤った捜査方針を導き出すことになり、ひいては犯人逮捕を逃す事になりかねない。だから、玲子のような捜査手法は我慢ならないのだ。 どちらも真理の一面をついているので、どちらかを弾劾する事はできない。そこで管理者が能力を発揮する事になる。今泉係長は玲子を本庁に引き上げた張本人であるだけに、内心では玲子に肩入れしたいところだが、そこは苦労人の中間管理職、手綱捌きに冴えを見せる。 肝心のミステリーを前に前置きが長くなってしまった。多摩川の土手に放置された軽のワンボックスカーから血だらけの左手首が発見された。死体なき殺人事件の幕開けだ。その日の朝、出勤した三島耕介が見たのは血の海と化したガレージだった。本来ならそのガレージに在るべき軽のワンボックスカーが多摩川の土手に放置されていたのだ。手首の指紋、DNA鑑定の結果、ガレージの借り主高岡賢一が殺害されたものとして捜査本部が設置された。 こうして玲子と日下の捜査が開始されるが、捜査の進展とともに事件は二転三転する。その度に読者は唖然とし、さらに物語の虜と化すのだった。車の中に残された左手の持ち主が高岡であることは指紋照合で明らかであったが、三島の証言が駄目押しとなった。 本書冒頭で語られる三島の生い立ちは悲惨であった。甲斐性なしの貧乏ダメオヤジでは、当然の結果妻に逃げられていた。三島の父は工事現場から飛び降り保険金で人生を清算した。三島が五年生の時だった。この先、三島の人生もおおよそ予想がつくというものだが、意に反して彼の人生は職人の道に喜びを見出す堅実なものであった。そのターニングポイントとなったのが、高岡の愛情であった。三島にとって高岡は親であり、師であった。それでは高岡は独身でありながら、何故そこまで三島に愛情を注いだのか。これが本書の隠されたテーマ、父の愛である。
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