ロビンソン・クルーソー

サバイバルという男としてはワクワクせざるをえないジャンル。困難を知恵と勇気で乗り越えていく様子は好奇心をくすぐられる。 ただ、この小説が魅力的なのはそれだけでなく、物語の随所に人生の教えが散りばめられているところである。 特にグッときたのは、「ないものねだりは、現状への感謝が足りないことから生まれること」「今置かれている状況よりももっと不幸な境遇であった可能性もあり（死や奴隷）、現在の境遇に感謝すること」という、ロビンソンが島生活の中でたどり着いた心の持ち方である。（原文とは多少文言が違うけど） 普段生活している中で、「もっと金、車が欲しい」「自分はあいつと比べると不幸だ、劣っている」と思ってしまうことが多い。 しかし、考えてみると、現状何不自由なく生活できているし、世の中には病気や災害で苦しんでいる人もいるわけで、それに比べれば自分は幸せであると、改めて考えさせられた。 一方で、ロビンソンがそうした境地に至りながらも、脱出の可能性があるとみるやいなや先ほどの敬虔な考えが脇に追いやられてしまい、無謀な行動に出てしまう人間臭さも、かえって親近感がわいた。 サバイバルというワクワク要素に加え、生き方の教え、誰でも共感できる人間臭さが物語に詰まっていて、長く愛される理由がわかる気がした。

非表示