賭博者

光文社古典新訳文庫

ドストエフスキー / 亀山郁夫

2019年12月10日

光文社

990円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

ドイツの町ルーレッテンブルグ。賭博に魅入られた人々が今日もカジノに集まる。「ぼく」は将軍の義理の娘ポリーナに恋心を抱いている。彼女の縁戚、大金持ちの「おばあさん」の訃報を、一同はなぜか心待ちにしていて…。金に群がり、偶然に賭け、運命に嘲笑される人間の末路は?

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Readeeユーザー

(無題)

-- 2019年12月19日

お祖母さんが出てきてからの展開が面白いと多くの人が感想に書いている。確かにテンポが変わりその通りなのだけれど、私は初めから元々の主人公キャラクターがあまりにもおかしすぎて親しみがあり初めから面白く読んだ。 主人公はドストエフスキーの中では「地下室の手記」や「おとなしい女」「未成年」「白夜」の主人公の系統に属するタイプで(もしかしたら悲喜劇の違いはあるがスメルジャコフも?)昨今人気のある「ぼっちユーチューバー:などもこれに相当するのかもしれない。 貧困や対人コミュニケーションに多少問題のある主人公に令和の現代、親和性を持つ人間は多いだろう。 この主人公は未成年のアルカージイ青年と同様激情型でありそんな自身の境遇に呪いのようなものさえ持っていて一発逆転し愛する女性を手に入れ人生のコインを裏返す野望を持っているところが特徴的である。 ヒロインのポリーナには白痴のナスターシャのような誇り高いゆえの折れそうな儚さや可愛らしさが感じられなかった。ただひたすら高慢な女性がサディスティックな愛を主人公に持っており、金で買われたような一夜を過ごした後は益々愛憎絡み合い憎しみを募らせるシーンなども魅力的ではない。(読み方によってはエロティックではあるが..) とうとう病に冒されるラストは漱石の虞美人草の藤尾に通じるものがある。そんなに愛していたならもっと素直に可愛らしくあればいいものをと思ってしまう。 また彼女がいかにもフランス的な似非優雅を気取った男と関係を持っているところもドストエフスキーの経験らしいので 実在の彼女への温度の低さ(別に男がいた)や速記者アンナ夫人への愛からの遠慮も小説に感じられる。 大枚を手にするとポリーナへの思いが少し飛んだ感じになるところは誰しもこのような経験をすれば多少似た感情を抱くのかもしれない。賭博の経験のない自分にはわからない。 軽薄淫靡なフランス女の方はグルーシェンカのような情は無いが亀山先生の指摘通り辛うじて不安定ながら優しさめいたものを見せる。 激情型のロシア人 主人公、お祖母さん、将軍、ポリーナ 軽薄淫靡なフランス人の男と女 堅苦しいドイツの男爵 愛よりも何処かセオリー優先の冷静な工場主のイギリス人 バーデンバーデンを舞台に(ルーレットなんとかという架空のドイツの街)こんなに割り切って書いて良いものかと思うほど国民性を書き分けているが、なんらかの形で皆が「金」に 翻弄されているところだけは共通していてそこに人間の普遍的な面白さ、滑稽な悲喜劇があるのだと思う。 それにしてもラストの独白の疾走感は白眉で素晴らしい。

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