木練柿

傑作時代小説

光文社文庫

あさのあつこ

2012年1月12日

光文社

814円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

胸を匕首で刺された骸が発見された。北定町廻り同心の木暮信次郎が袖から見つけた一枚の紙、そこには小間物問屋遠野屋の女中頭の名が。そして、事件は意外な展開に……(「楓葉の客」)。 表題作をはじめ闇を纏う同心・信次郎と刀を捨てた商人・清之介が織りなす魂を揺する物語。時代小説に新しい風を吹きこんだ『弥勒の月』『夜叉桜』に続くシリーズ第三巻、待望の文庫化。

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Readeeユーザー

(無題)

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3.3 2018年01月27日

木暮信次郎は、容赦なく相手を切り裂き、臓腑ごと真実を引き摺り出すのが常でありました。これに対して遠野屋清之介は、暖かく包み込みいつの間にか人を意のままにしてしまうのでした。伊佐治親分はそんな2人を見ていて、どっちも恐ろしい人間と感じているのでした。 『弥勒の月』『夜叉桜』に続くシリーズ第三作です。感動とともに読み終わりました。前の2作がそれぞれ長編で一話完結だったのに対して、今回は4つの短編連作です。事件を重ねるごとに、遠野屋清之介と同心木暮信次郎、岡っ引の伊佐治の三人の人格がよりはっきりしてきます。前2作では、最後に読者をあっと言わせるドンデン返しが用意されていましたので、時代劇ミステリの趣きがありましたが、第三作に至って主人公三人の役どころがハッキリし、このままシリーズとして定着していきそうです。 ともすれば時代小説は、ストーリーテイリングの面白さで読ませようとするものですが、本書の著者は、前2作同様に読者を『ゾクッ』とさせる迫り方をします。それは「人間って、こんなにも醜くくもあり、美しくもある」と見せてくれているのです。表題作の「木練柿」で、清之介とおりんが夫婦になる前のエピソードが綴られています。『弥勒の月』ではいきなり死んでしまうおりんでしたが、この物語で生き生きとした人物像が浮かび上がってきました。清之介が刀を捨てたのは、亡くなったおりんに出会って遠野屋の婿に入るときでしたが、専ら人を殺す事のみに剣を用いてきた清之介が刀を捨てられるかどうか迷っていました。満月の夜、両刀を預かりながらおりんは「お覚悟を」と言ったのでした。おりんのこの言葉は今でも清之介の中で生きています。

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