ふたつの人生

ウィリアム・トレヴァー・コレクション

ウィリアム・トレヴァー / 栩木伸明

2017年10月25日

国書刊行会

2,860円(税込)

小説・エッセイ

施設に収容されたメアリー・ルイーズの耳には、今もロシアの小説を朗読する青年の声が聞こえているーー夫がいながら生涯秘められた恋の記憶に生きる女の物語「ツルゲーネフを読む声」。ミラノへ向かう列車内で爆弾テロに遭った小説家ミセス・デラハンティは同じ被害者の老人と青年と少女を自宅に招き共同生活を始める。やがて彼女は心に傷を負った人々の中に驚くべき真相を見いだしていく……「ウンブリアのわたしの家」。ともに熟年の女性を主人公にした、深い感銘と静かな衝撃をもたらす傑作中篇2作を収録。

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toruo

(無題)

-- 2022年05月12日

アイルランドの短編作家のちょっと長めの作品二つを収めたものでいずれも女性が主人公。一つ目の「ツルゲーネフを読む声」は結婚していながらも早生したいとこに想いを持ち続けて施設に入れられた女性の話、ということだったが、自分が読んだ限りむしろ間違った結婚の結果、精神を蝕まれた女性が早生したいとこを記憶の中で美化した話、としたほうがぴったりくる感じだった。アルコールの問題を抱えた夫、底意地の悪い小姑達、徐々に没落していく家族の地位(解説によるとアイルランド特有の宗教問題も背景にあるやうだ)の中で破壊されつつもそれにあがらっていく女性が痛々しい。もう一編の「ウンブリアの私の家」はイタリアの屋敷を買ってそこをこじんまりとしたホテルにしている女性作家が主人公。テロに遭遇し生き残った作家は同じ事件の生き残りたち〜家族を全部失った少女、老人と恋人と自分の片腕を失った青年の三人〜をいったんホテルに引き取って同居をはじめる。作家自身も壮絶な前半生を送っておりその結果が彼女を作家たらしめているのだがその想像力が生き残った人たちとの交流の中で思わぬ方向に向かっていき…という話。少女をアメリカから迎えに来た叔父とのやり取りは正直かなり読んでて辛かった。実力あるし面白いんだけどそれ故に嫌な話はとびきり嫌になるということが分かりました(笑)

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