祇園の教訓
昇る人、昇りきらずに終わる人
岩崎峰子
2003年7月31日
幻冬舎
1,650円(税込)
人文・思想・社会
十五分で初対面の人の気持ちをほぐします、扇子一本でわけるもてなしの一線、名前はお客様同士のやりとりを聞いて覚えます、三年前に出た話題も忘れません、徳利の傾きも見逃さない気転と気配り…一流になる人の共通点。
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(無題)
サブタイトルがいいですね。「昇る人、昇りきらずに終わる人」。祇園という社会的地位と富みとを兼ね備えた男が遊ぶ世界で舞妓、芸妓として生きた著者が男を見極めるというのですから、男を磨きたいと思っている人は、ぜひとも参考にしたいと考えるのではないでしょうか。僕の場合は既に終わっているのですから、この書をどう読むか、多分登るだけの能力がなかった人、なんでしょうね。 著者の岩崎峯子は、祇園甲部の芸妓置屋・岩崎の女将に跡取りとして見初めら、養女となりました。芸妓として6年間売り上げナンバーワンを達成した後、何とアメリカで「Geisha, a Life」を上梓したんですね。芸妓の頂点に立った著者、そして一流の経営者や学者を客として見てきた著者、彼女の一言ひとことには心を揺さぶる重さがあります。 祇園甲部では客は経済力のみならず知的・文化水準の高さを要求されます。そこで観察された「積極的に真似したい」と「反面教師」としたいの例が実生活でも参考になります。例えば筆者は「苦労が身につかない方がいらっしゃいます。それは『人ができないような苦労をしてきた』とおっしゃる方です。『苦労』は見る人が見れば分かります。それは喧伝するものではなく、それを感じさせずに周囲に配慮できる人物こそ器が大きいということかと思います」。と述べています。 この本の中では、花街の習慣、お客となる関西の財界人とのお付き合いを通しての様々な体験などが綴られており、さすがという話しが数々。花街の習慣として「一見さんお断り」というのは格式の高さ示すもの。財界人との交流話の中で印象に残ったのは、「苦境に入ったら、まずはあきらめず、すべきことをすること」というのが心にしみました。
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