おもかげ橋
葉室麟
2013年1月31日
幻冬舎
1,760円(税込)
小説・エッセイ
剣は一流だが、道場には閑古鳥が鳴く草波弥市。武士の身分を捨て、商家に婿入りした小池喜平次。二人は、彼らを裏切り国許から追放した勘定奉行の娘で初恋の女・萩乃と、十六年ぶりに江戸で再会し、用心棒を引き受ける。一方、国許では、かつて化け物と恐れられた男が藩政に返り咲き、藩を二分する政争の余波が、二人にも及ぼうとしていたー。
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(無題)
早稲田大学にほど近い神田川に架かる面影橋。何かロマンチックな物語が秘められた名前である。その由来には諸説あるが、ここでは絶世の美女・於戸姫(おとひめ)伝説を紹介したい。和田靱負(ゆきえ)の娘・於戸姫が美貌が故に我が身に起きた数々の悲劇を嘆いて身を投げたという。村人達はその娘の死を哀れみ、橋からその面影を偲んだというのである。 そんな面影橋の近くで、繰り広げられる恋とお家騒動を巡る物語である。もちろん絶世の美女が登場する。名を萩乃という。萩乃に絡むのが、剣は一流だが生活は五流の草場弥市と、幼馴染みで武士の身分を捨てて商家に婿入りした小池喜平次。二人にとって萩乃は初恋の相手。そして今は人妻の身。16年ぶりの再会で、心に浮かぶ想いは如何に?一方の萩乃はと言えば、政略結婚故に心の通わぬ夫と舅・姑の嫁いびりにいたたまれぬ日々を送っていた。それにつけても思い出されるのは娘時代に想いを寄せた青年武士である。萩乃が心に描いた面影は弥市だったのか、それとも喜平次だったのか。女心の心理と生理を巧みに描いている。
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